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11月14日のAPECにおける野田首相の発言について、米国のアーネスト大統領副報道官は「TPPについて、野田首相はすべての物品とサービスを貿易自由化交渉のテーブル に載せると発言した」と発表した。日本外務省は「事実と異なる。そういう発言はしていない」と訂正を申し入れたが、 アーネスト氏はあらためて「米政府の発表内容は正確であり訂正することは考えていない。」と言明した。翌15日、国会で野田首相は「そんなことは一言もいっていない」と否定。外務省によると、野田首相がオバマ大統領に対して述べた言葉は、 重要品目に配慮しつつ、全品目を自由化交渉の対象にする、とした昨年の政府方針に言及し、「この基本方針に基づき、ハイレベルな経済連携を目指す」だったとのことである。この言い方では米側の発表も完全な誤りとは必ずしも言えないのではないか。この発言を聞けば、言われたほうは「サンキュー」と返事をしたくなったかも知れないし、それが自然な対応のようにも思える。

野田首相は同日「国益を損ねてまで参加することはない」とも答弁している。これまでは 「TPP参加はメリットがある」、つまり「国益になる」と述べていたと思うのだが、 国益にかなう条件、逆に国益を損ねる条件について、野田氏がどんな内容を想定しているのか、それがさっぱり分からない。TPPに関する野田首相の発言はこのように常に抽象的・断片的であり、聞いているほうは賛成、反対の判断・選択以前に、「そうか、そういう理由で政府はTPPに参加しようとしているのか 」というような納得の感触を得られたことが一度もない。

問題の重大さを考えれば、首相がこれほど曖昧模糊とした態度をとりつづけるのは無責任のきわみだろう。野田氏とともにTPPを推進する側の仙谷由人氏や前原誠司氏は首相とちがって発言はするものの、その内容がひどい。「 僅か1.5%の人を守るために残りの98.5%の人を犠牲にできない」と堂々少数者を切り捨てる発言をしたり、TPP反対派について 「信念か宗教的関心か知らないが、言い募って、党内合意を形成させないことを自己目的化して動いている」と述べてみたりと、想像を絶する悪質な言動をしている。 TPP参加によって日本国内の農業が壊滅状態になるのではないか、放射能汚染に対する食の不安に加えて、遺伝子組み換え食品・農薬まみれの農産物が入ってくるなど食の危険がいっそうふかまるのではないか、国民皆保険が壊滅させられて病気になっても病院に行けない者が続出する悲惨な時代がやってくるのではないか(米国では保険に入れず、そのために死亡する人が1日100人はいると聞く。乳幼児死亡率も自分たちが散々苦しめ抜いてきたキューバより高い)、等々、大多数の国民がTPPを不安視したり、どのような協約なのか実体を調べようと必死になるのは当然であろう。国民の側のそういう諸々の不安・恐怖に対して仙谷氏や前原氏は率先して説明するのが本来の立場のはずである。ところが現実は当然の不安を訴えたり、説明を求める者を恫喝するのだから、これはいったいどういう政府なのだろう。

TPPに慎重・反対派の国会議員はしきりに「TPPは農業の問題だけに限らない。国民生活全般に関係する。」と述べていたが、これはまったく正確な見方・判断だったと思う。11月3日、議員連盟「TPPを慎重に考える会」の会長である民主党の山田正彦前農相はBS朝日の番組で、「TPP交渉参加の是非をめぐり、「我々の中には離党を覚悟 している人もいる。私自身も覚悟している」と述べ、野田首相が交渉参加に踏み切った場合は、TPP慎重派による集団離党も検討する考えを示した。 」(読売新聞11月3日)とのことであった。

なかなか頼もしいな、と思って期待していたのだが、11日、野田首相が記者会見で「 私としては、明日から参加するホノルルAPEC首脳会合において、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることとした。 」と表明すると、即座に反対・抗議の意見を述べるかと思われた山田氏は、何と「本当にありがたい。『交渉参加』でなく『事前協議』にとどまってくれた」と述べた。これは、「首脳会議で各国との交渉入りを表明することに変わりはない。それでも慎重派が首相を評価した背景には、離党だけは避けたいという本音が見え隠れする。」(産経ニュース11月11日)という新聞論評のとおりなのだろう。それにしても、山田氏の発言はないだろう。聞いているほうは唖然とするしかないのだが、他の慎重派・反対派の議員たちも大同小異の振る舞いであった。同じく民主党の川内博史氏は、ツイッターで「 TPP首脳会合に、総理は「参加」できなかった。「宣言」できないからであり、「交渉参加」=「宣言」は、まだまだだ。マスコミが、どう報道しようと、国際交渉は言葉に厳密なのだ。「参加に向けて」と 「参加」は、全然違う。だから会合には、まだ入れない。勝負は、これから」と述べていた。そらぞらしいにも程があるだろう。 彼らは、TPPに反対する農業関係者、医療関係者を初め、無数の国民大衆をこのような芝居がかったわざとらしい台詞で裏切ったことになるのではないか。

米側が発表した「全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる」などの発言を野田氏自身は否定していることはこのエントリー冒頭で記したとおりだが、野田氏は一方、米側に今後訂正を求めるつもりはないとの考えも表明した。22日の時事ドットコムによると、山田氏ら「TPPを慎重に考える会」はこの首相発言に反発し、米政府に訂正を要求するよう政府に求める決議をまとめたそうである。 同紙は、「こうした混乱は、首相がTPPへの対処方針を表明した記者会見で、慎重派に配慮して 「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と曖昧な表現を用いたことに端を発している。」と書いている。それもそうだが、そもそも野田首相はTPPに関連してこの間ずいぶん懸念され、議論の的にもなっていたISD条項について国会質問を受けると、「ISDは寡聞にして詳しく知らなかった」と述べた。これでは、もしや協定の中身について厳密な検討もしないで米国追従の一念だけで動いているのではないかという疑いも起きる。もしそうだとすると、本物の自信はないだろうから、日本でも米国でも曖昧な表現をしてしまうのも、また自分が発言していないことを米国によって発言したことにされたというのに「訂正は求めない」というのも合点がいく。

問題は野田氏や政府閣僚だけではない。反対派の中心議員が首相のあの会見に「『交渉参加』でなく『事前協議』にとどまってくれた。ありがたい。」と述べたのではどうしようもない。山田氏らは「離党を覚悟している」のではなかったのだろうか? 私は山田氏が小沢一郎氏のグループ所属だとは今回初めて知ったのだが、kojitaken氏は「 城内は、 「一部の民主党議員」が「次々と執行部の弾圧をおそれて軍門に下った」と書くが、それ以上に彼らは大ボスの小沢一郎の真意を「忖度」したのである。これぞ「ソンタクズ」 の鑑! 」と書かれている。ベテラン議員のはずの山田氏にしてそうなのだろうか。しかしそんなことはもう金輪際止めたほうがいいと言いたい。だれかの気持ちを「忖度」してであろうと、他の理由によるものであろうと、あの行為はあまりにも恥ずかしいことだ。政府が米国に訂正を求めて米国がそれに応じなかったら、 あるいは訂正に応じたとしても、山田氏らはその後TPPに対してどのような動きをするつもりなのだろうか? これ以上「茶番」と疑われる行動は願い下げにしてほしい。


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常に関係者の「忖度」の対象であるらしい小沢一郎氏だが、この人物に関しては、つい最近もいくつかの絶讚ブログ記事を見た。そのうち2例を挙げたい。

(1) 「TPPも普天間も、そして原発も、官僚や米国に牛耳られゴリ押しされて、このままでは日本崩壊だ!
  (略)
もう、こうも負けグセがついてしまうと、なるようにしかならないのではないかと自暴自棄、疑心暗鬼、退廃的、刹那主義に陥ってしまいがちだ。
それでも、まだ一縷の望みを失わないのは、唯一の希望である、小沢一郎という100年に一度の逸材、稀有な政治家が今、この世に生きて存在しているからにほかならない。
そこで、原点に立ち返る意味でも、今週のサンデー毎日がちょうどいい企画をしてくれている。(要、必買) 」

ということで、『サンデー毎日』での鳥越俊太郎氏による小沢氏へのインタビュー記事が掲載されている。一ヶ所だけ引用させていただこう。

鳥越 将来的には原発をなくしていく方向でしょうか。
小沢 最終処理が見いだせない限り(原発は)ダメ。新エネルギーを見いだしていくほうがいい。ドイツには石炭などの資源がありますが、日本はない。ですからドイツのように10年で原発を止めるわけにはいかないかもしれないが、新エネルギー開発に日本人の知恵とカネをつぎ込めば十分可能性はあります。思えば、過渡的エネルギーだと分かっていながら原発に頼りすぎました。「もう少し強く主張しておけば良かった」という反省はあります。」

ブログ主は、 TPPにも普天間からの基地辺野古移設にも、そして原発にも反対らしい。この文脈で「小沢一郎という100年に一度の逸材、稀有な政治家が今、この世に生きて存在している」ことが「唯一の希望」ということは、小沢氏もTPP、普天間基地辺野古移設、原発に反対していると言いたいのだろうか? そもそも小沢氏は何を「もう少し強く主張しておけば良かった」と述べているのだろう。もう一つ、別のブログから次の文面を。こちらは田原総一郎氏によるインタビューだが、雑誌ではなく動画についてのコメントである。

(2) 「 この動画を見て、改めて小沢一郎のすばらしさを再確認した人も多いと思う。米国にも言いたいことが言え、官僚をうまく操り、消費税増税に反対し、原発廃止を堂々と訴えられる小沢一郎しか今の日本には首相に適任な人物はいないだろう。」

小沢氏が動画でどんな話をしているかというと、「TPPに関して野田首相は言葉の使い分けをしている。昔から日本政府の手法は変わらない。アメリカの話のときはアメリカにいいようにしゃべり、国内では言い方を変えて話す」「今の福島原発の状況について強い危機感を持っている。完全に封じ込めることはできないことはない。ただ何十兆円も の莫大な金がかかるらしい。でも金の問題ではないので国民に説明して国家が前に出るべき」「高レベルの放射能廃棄物の最終の処理方法がない。この処理方法が見つからないかぎり、原発にずっと依存していくのは不可能 。だから原発は過渡的なエネルギーで、他のエネルギーに変えていくべき」、等々。小沢氏は確かに消費税増税については「反対」と口にしている。しかし、他の問題については曖昧などうにでも受けとれることしか述べていないように思う。まして「原発廃止を堂々と訴えられる小沢一郎」との評価に至っては、買い被りというよりデマゴギーの流布ではないだろうか。

以前、秋元健治著「原子力事業に正義はあるか―六ヶ所核燃料サイクルの真実」(現代書館2011年)という本のなかの小沢氏が登場する場面をこの記事に引用した。1991年初頭、核燃サイクル基地をめぐって7年にわたり争われてきた闘いのクライマックスというべき青森県知事戦が行なわれた。この時小沢氏が幹事長を務めていた自民党海部内閣は、湾岸戦争の最中であるにもかかわらず、首相以下次々に青森に乗り込み、当時「反核燃」の勢いに押されて落選の危機がささやかれていた「核燃推進」の現職知事の応援に駆けつけたという場面である。再度引用する。


1989年7月の参院選挙での「反核燃」候補の圧勝、その翌年2月の衆議院選挙でも、「核燃白紙撤回」を訴えた社会党の関晴正候補、山内弘候補が自民現職を抑えて当選。六ヶ所村では「核燃凍結」を人びとに信じさせた土田浩村長の誕生があった。このとき「反核燃」の風は、少しも衰えていないようにみえた。

  県知事選挙
 そして核燃料サイクル基地をめぐる最終決戦は、1991年1月から2月にかけての青森県知事選挙だった。もし青森県の知事が「反核燃」となれば、「核燃白紙撤回」が現実となるかもしれない。核燃料サイクル基地の立地基本協定はすでに締結されていたが、その立地基本協定には事業の進展に合わせて段階的に関係者間で安全協定を結ぶことが明記されていた。施設の建設が完了しても、青森県知事が安全協定の締結を拒めば操業はできない。核燃料サイクル基地の立地基本協定そのものの破棄さえ、政策の選択肢となりうる。もっともそうなれば、事業者は青森県にたいし損害賠償訴訟を提起するかもしれないが、いずれにしろ「反核燃」は大きく前進する。
 社会党や農業団体、市民団体など「反核燃」の人びとが知事選の候補者に選んだのは、「核燃料サイクル阻止一万人訴訟原告団」にも名を連ねる金沢茂弁護士だった。一方、自民党の保守は分裂し、「核燃推進」の現職の北村正哉、そして「核燃凍結」の山崎竜男が立候補した。山崎竜男は参院議員を四期、環境庁長官も務めた有力政治家だったが、 「山崎降ろし」に失敗した自民党の公認を受けられず「核燃凍結」を公約として出馬した。「反核燃」の県民世論は、金沢茂に有利であり、保守分裂と「核燃推進」の北村正哉は逆境のなかにいた。
 このままでは核燃料サイクル基地が頓挫する。電力業界、原子力産業界、そしてそれらを後ろ盾とする自民党は大きな危機感を抱いた。北村正哉候補は、中央の政財界から強力な支援を受けた。電事連の那須翔会長は北村支持を表明し、電力業界は資金のみならず、電力や関連企業の社員を動員して電話などで選挙運動をおこなった。内閣総理大臣でさえ青森県知事選挙で動いた。湾岸戦争のさなかという国際情勢下、海部俊樹首相が青森市に姿をあらわし県民6000人の前で北村支持をうったえた。他にも青森県には、大島理森官房副長官、小沢一郎幹事長、橋本龍太郎大蔵大臣、山東昭子科学技術庁長官、加藤六月、三塚博、アントニオ猪木ら国会議員が北村陣営の応援に駆けつけた。こうした政界大物や著名人の登場、潤沢な選挙資金が、逆風のなか「核燃推進」の北村正哉候補の票を確実に増やした。
 そして1991年2月3日、投票と即日開票。青森県知事選挙の結果は次のとおりだった。「核燃推進」で自民公認の北村正哉が32万5985票、「核燃白紙撤回」で社会党、共産党の推薦を受ける金沢茂は24万7929票、「核燃凍結」の無所属の山崎竜男は16万7558票。投票率は、66.46%という青森県知事選では史上二番目の高さだった。
 四選を果たした北村知事は、感慨深げに言った。
 「こんなきびしい選挙を経験したのは初めてだ」一方、敗れた金沢茂は次のように無念の心情を語った。
 「青森県民は核燃との運命共同体を選んだ。私はこれからも白紙撤回への努力を続ける」
 しかしこの知事選の結果から、県民が「核燃推進」を選択したとはいいきれない。「核燃白紙撤回」金沢候補と、「核燃凍結」の山崎候補の投票数を合わせると、「核燃推進」 の北村候補の投票数を上回っている。自民党公認を争っての保守分裂が、山崎候補の「核燃凍結」という曖昧な公約をうみだし、結果的に「反核燃」票の何割かがそちらに流れ た。また北村陣営は核燃料サイクル基地以外に選挙戦の争点をあてようと必死だった。
 この青森県知事選を境に、県内の「反核燃」の運動はしだいに力を失っていく。これからわずか3カ月後の1991年4月7日の県議選では「反核燃」候補の落選が相次ぎ、自民党が圧勝した。六ヶ所村では核燃料サイクル基地の建設が着々とすすみ、それぞれの原子力施設は操業開始への段階をすすみつつあった。」

上の文章についての意見・感想として私は、下記のように書いた。

「6月2日の不信任案決議の時、菅首相を批判した自民党の大島理森氏の語調はまるで「弾劾演説」とでもいいたくなるほどに異様に厳しかった。上述の本の一節を読むと、この大島氏といい、小沢一郎氏といい、菅直人氏をこれほどまでに厭うのは、あるいは菅氏がエネルギー政策の転換を口にしたことが影響しているのかも知れないという気もしてくるのである。もしかすると、大島氏もそうだが、当時与党幹事長として辣腕をふるっていた小沢氏は、日本の原発推進勢力の重要な一角を占めた一時期があったのかも知れないとも思う。」

この時私は、小沢氏の後援会会長が平岩外四氏であることを知らなかった。そのため、上記のように「 ……一時期があったのかも知れないとも思う 」という曖昧な書き方しかできなかったのだが、もし知っていたら、「六ヶ所村の核燃料サイクル基地建設に小沢氏の辣腕は、大きな役割を果たした。」というように書いたと思う。というのも、「原子力事業に正義はあるか…」によると、84年4月20日、青森県の北村正哉知事に青森市内の「ホテル青森」で、正式に下北半島太平洋側に核燃料サイクル3施設立地の協力を要請したのは、電気事業連合会(電事連)会長の平岩外四氏であった。サイクル3施設とは、今では周知の核燃料再処理工場、ウラン濃縮工場、そして低レベル放射性廃棄物貯蔵施設である。その時から六ヶ所核燃料サイクル基地反対運動の長い闘いが始まるわけだが、上述した91年の青森県知事選における自民党政府および小沢氏の動きについて、鎌田慧氏のルポルタージュ「六ヶ所村の記録 上下」(岩波書店1991年) には下記の叙述がある。

「…「地方自治体の選挙に政府が干渉するのはおかしい。準公共企業体の独占企業の団体である電事連が選挙を請け負って、カネをふんだんにだしている」
 これが「核燃選挙」といわれる知事選の実態である。やってきた自民党の小沢幹事長は遊説にまわらず、青森市内のホテルに陣取って土建業者を呼びつけ、ひとり3分ずつ面会した、とのエピソードは、よく知られている。現職候補と自民党は、県財界、農漁業団体はおろか、保育園のはてまで締めつけていた。」 (六ヶ所村の記録 下)

また、広瀬隆・明石昇二郎著「原発の闇を暴く」(集英社新書2011年)で、80年代から原発の取材を続けてきたという明石氏は渡部恒三氏と小沢氏について次のように述べている。

「 ……今、僕が気になっているのは、被災地である東北選出の政治家たちの動向なのですね。家族を亡くした国会議員が被災地救援で奮闘していることは知っています。でも、 いわゆる「大物政治家」の姿がなかなか見えてこないわけです。民主党で言えば、もともとは自民党で原発政策を推進し、福島や青森に核施設を建ててきた小沢一郎(岩手四区)、渡部恒三(福島四区)といった人たちです。彼らが原発推進に協力してきたことで一銭の利得も得ていないとは言わせません。
 小沢一郎が、自民党幹事長時代に剛腕を振るわなければ、六ヶ所村の核燃サイクル基地は建ちませんでした。核燃基地建設の是非が最大の争点となり、事実上の「天下分け目の戦い」となった1991年の青森県知事選の時、小沢が青森に乗り込み、敗色濃厚だった核燃推進派の現職知事陣営にテコ入れをし、すさまじいまでの締め付けをしたことで形勢を逆転させた。僕はこのことを決して忘れません。
 渡部恒三もまた、自民党時代に原発を福島に担ぎこんだ張本人です。1980年4月8日の衆院商工委員会で質問に立った渡部は、「政府は、原子力は安全であるということを国民にもっと知っていただかなくちゃならない」と冒頭で語った後、こう発言している。
「原子力発電所の事故で死んだ人は地球にいないのです。ところが自動車事故でどのくらい死んでいますか。人の命に危険なものは絶対やっちゃいかんという原則になれば自動車も飛行機も直ちに生産を中止しろということになる」 」

渡部恒三氏の自動車事故云々発言は80年ということだが、原発と自動車・飛行機の危険性を比較して原発を擁護しようとする言説は今でも横行しているから、この理屈は延々30年以上繰り返されていることになる。渡部氏にはこの時の発言を今はどう考えているのか、思いは今でも変わっていないかどうかを聞いてみたい。

さて、小沢一郎氏だが、「六ヶ所村の記録」における鎌田慧氏の記述、「原発の闇を暴く」における明石氏の証言を見れば、六ヶ所村の核燃サイクル施設立地に小沢氏が大きな力を発揮したことは明白だと思われる。では、福島第一原発事故発生以後はどうかというと、事故以来原発に対して慎重になった菅前首相に対し不信任決議を行使してまで引きずり降ろそうとしたり、 菅氏の後釜に原発再稼働にきわめて積極的だった海江田万里氏を推したりなど、その現実的行動は事故以前と何も変わっていない。 最近「原発は過渡的なエネルギー」という発言を小沢氏は頻りに繰り返し、支持者はその発言を反・脱原発の証拠のように触れ回ったりしているが、上脇博之氏のブログが書いているとおり、「「私は最初から「原発は過渡的なエネルギーだ」と言ってきたんです」というのは、「過渡的」期間を何年であると説明しなければ、全く意味のない発言」である。 TPPについても同様だと思う。最近、政策に対して小沢氏が明確に「反対」と言明したのは消費税増税のみである。こういう小沢氏に上述した (1) (2) のブログ主たちは何を期待するのだろう。自分たちの発言がデマゴギーと化していないかそろそろ省みてもいい頃ではないだろうか。

「原子力事業に正義はあるか―六ヶ所核燃料サイクルの真実」はこの施設の怖さをひしひしと実感させる書物だが、広瀬隆氏もその危険性について警鐘を鳴らしている。「原発の闇を暴く」から該当箇所を引用しておきたい。


  「原発震災」は今後も必ず起こる
広瀬 実を言うと私は、東日本大震災が起こった時、最初は福島より青森県六ヶ所村の再処理工場を心配していたのですよ。あそこは日本中の原発からすべての放射性廃棄物を集めてきた最大の危険プラントで、福島原発事故で分った最大の教訓は、絶対にこのように一ケ所に危険物を集めてはいけない、ということです。六ヶ所村は今とても危険な状態にあるし、何より日本国内の原子力プラントで最低の耐震設計ですからね。六ヶ所村がやられたら放射能災害は福島どころの話じゃなくなる。ニュースに出てこないからますます心配になって、調べてもらったら、作業員全員が一時退避したらしいが、たぶん大丈夫だろうということしか分らない。
明石 六ヶ所再処理工場の耐震性は、あの「活断層過小評価」で名高い衣笠善博(東京工業大学名誉教授)のお墨付きですから、全然信用ならないです。衣笠の甘い活断層評価のおかげで、これまで日本にどれだけの原発が立地できたことか。原子力産業のヒーローとも呼べる人物です。
広瀬 いやまったくその通りで、衣笠の、権力を背景にした「犯罪」は重大です。彼のことは後の章でじっくり話しましょう。
 衣笠が断層を短く評価してきたおかげで、六ヶ所再処理工場も大間原発(青森県大間町。建設中)も東通原発(青森県東通村)も、全国最低の耐震性になってしまった。国は今、原発設の耐震性についてバックチェックという見直し作業をやっているけれど、青森の下北半島にあるその3施設の耐震基準は450ガルで、今もって日本で最低です。なぜなら、六ヶ所村の基準に合わせざるをえないからです。六ヶ所村の耐震性では危ないということで、その基準を上げたらみんな上がるのだけれど、基準を上げられない事情がある。六ヶ所村で耐震強化工事ができないから、大間も東通も上げられない。
明石 なぜ六ヶ所再処理工場の耐震工事ができないのですか。
広瀬  放射能で汚染されているから近づけないのです。特にこわいのは配管ですよ。六ヶ所再処理工場には、青森から下関ぐらいまでの距離に匹敵する長さの配管が走っていて、 その複雑な配管の中で世界最大級の汚染をやってしまった。プルトニウムを扱っていて超危険な状態だから、人間が近づけないのですよ。
 六ヶ所再処理工場がまともに運転できないことは最初から分っていたのです。前身の東海再処理工場の時代からトラブルの連続でね。技術が未熟なのに六ヶ所村に持ってきて大型化したものだから、運転するとストップ、運転するとストップを繰り返してきた。それがついに、2008年10月24日に、高レベルの廃液をガラス固化する溶融炉のノズルに白金族が詰まって流れないという末期的状態に陥った。その時、この運転会社の日本原燃がどうしたと思いますか。なんと、棒を突っ込んでノズルの穴を突っつくという狂気のような作業をしたのですよ。その結果、今度は突っ込んだ撹拌棒が抜けなくなってしまった。危険で近寄ることもできないので、しかたなくカメラで覗いてみると、棒がひん曲がって、さらには炉の耐熱材として使われているレンガがノズル部分に落ち込んでいることも判明した。こんなマンガのような能力で、デッドエンド。
 その結果、固化することもできないまま、高レベルの放射性廃液が240立方メートルもたまってしまった。この廃液は強い放射線を出して水を分解し、水素を発生させます。絶えず冷却して、完壁に管理をおこなわないと爆発する、きわめて危険な液体なのです。この廃液が1立方メートル漏れただけで、東北地方、北海道地方南部の住民が避難しなければならないほどの大惨事になる。私が原発の反対運動を始めた最大の動機は、1977年に、再処理工場の大事故について西ドイツの原子力産業が出した秘密報告書の内容に震え上がったからです。廃液のすべてが大気中に放出されれば、まず日本全土は終ると見ていいでしょう。こんな危険な場所で耐震工事をできるわけがない。
 おまけに、六ヶ所再処理工場は今回のような津波の想定すらしていません。高台にあるから大丈夫だというが、海岸からたかだか5キロくらいのところにあるのですよ。あそこはなだらかな坂でしょう?
明石 ええ、再処理工場はそれなりの高台にありますが、ただ、海岸からなだらかな丘陵になっています。僕も六ヶ所村には取材で何度も行っていますから。
広瀬 東日本大震災の津波の高さは最大17メートルと言われるけれど、津波は陸上をさかのぼる遡上の力がすごいからね。今回も遡上の高さの最高が40.5メートルに達したことが分っています。再処理工場に津波が来て電源が喪失したら、世界が終りですよ。
 東日本大震災の本震から約1ケ月後の4月7日に最大の余震が起こり、岩手、青森、山形、秋田の4県が全域停電になった時、六ヶ所再処理工場では外部電源が遮断され、非常用電源でかろうじて核燃料貯蔵プールや高レベル放射性廃液の冷却を続けることができたというのです。日本消滅の一歩手前まで行ったというのに、その後も、日本国民とマスメディアは平気で生活している。あそこには3000トンの容量の巨大プールがあって、そこに使用済みの核燃料を受け入れているのですが、もうこのプールはアップアップで満杯なのです。地震で、もしこのプールに亀裂が入って地下に汚染水が漏れ出し、メルトダウンしたらどうするのか。今度は原発100基分だよ。それを考えるとぞっとします。
明石 福島の汚染水を、六ヶ所再処理工場に持っていくという話も出ていたらしいですね。
広瀬 あれはとんでもない話だ。青森県の住民にとっては言語道断ですよ。さらに、六ヶ所再処理工場と同じ最低の耐震性の大間原発で、プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を全炉心で使う「フルMOX」をやろうというのだから、下北半島に対する住民の不安は、ますます大きくなっていると思います。MOX燃料を使う場合、中性子を吸収して核分裂を止める制御棒の機能が低下することはもう分っているのです。今の青森は非常にこわい。 」
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2011.11.25 Fri l 社会・政治一般 l コメント (1) トラックバック (1) l top
発足3ヶ月足らずの野田政権だが、この間の動きを見ていると、日に日につよい危うさをおぼえるようになってきている。この政権は文字どおり戦後史上最悪、取り返しのつかない悪政を敷いて終わることになるのではないだろうか。APECで、野田首相は、TPP交渉参加を表明しただけでなく、沖縄普天間基地問題でも辺野古への移設に必要な環境影響評価書の年内提出をオバマ大統領に約束したそうである。沖縄県民の意思と希望を完全黙殺して。現政権に限らないが、近年の政治家には「沖縄県民の理解が得られるように努力する」という発言が多い。これは、「沖縄県民が自ら犠牲になることを承知するように努力する」という意味に他ならないだろう。さらにその先を読むと、「そうしてくれなければ、われわれ政権首脳の米国に対する立場が悪くなるんだから。」ということだろう。自国民を守ろうという気概もなければ、独立精神もまったく感じられない。

野田氏は消費税の10%増税についてもなぜか外国人に向かって決意表明している。その他に、南スーダンへの自衛隊派遣問題もある。 野田氏を初め、現政権閣僚の多くは3.11の大震災と原発事故を菅政権の元で同じく閣僚としてして身をもって体験したはずだ。だが、この人たちにとってそんなことは今となってはもう他人事、過去の話なのだろうか。前首相が何とか脱原発依存という方向性を公的に宣言したにもかかわらず、後を引き継いだ政権は、そんなことはなかったかのように、早々と原発再稼働を決定・推進し、原発輸出も進めている。閣僚一人一人は、あれだけの地震、津波、原発事故から骨身に徹して感じとったもの、学んだものはないのだろうか。

野田政権が強引に押し進めているTPPについていうと、農業は一旦耕作を止めてしまうといざ農作物自給が絶対に必要という事態になったとしても、人も直ちに対応はできないだろうが、農地は不毛の地になってしまっている恐れがつよいのだ。昔、三里塚闘争が盛り上がっていた頃、テレビで見たのだが、なぜここまで強硬に反対するのかと聞かれた空港建設反対派農民の一人である壮年男性が、手で土をひと掴み掬ってそれを上からパラ、パラと落としてみせたことがあった。今もよく覚えているのだが、ツヤツヤと光った粘りけのある焦茶色のその土の見事だったこと。皮膚に吸いつきそうなその土を掌にその人は「これは何十年も丹精込めて耕して初めてこういう土になるんですよ。一朝一夕には決してこうはならんのです。」というようなことを力を込めて語っていたのだったが、白黒のテレビでその土を見た瞬間、どんなことがあってもこの土地を手離すことはできないという心情はいっぺんに分かったような気がしたものだ。TPPは「例外なき関税撤廃」が原則。農林水産省の試算によると、TPPに参加した場合、 日本国内の食料自給率は2010年度の 39%から13%程度に急落するという。これでは、農業従事者の大多数は、 三里塚の農民のように強引に立ち退きを迫られるわけでなくても、実質的には同じ境遇に陥れられることになるのではないか。実際、農産物生産者のなかには、かつての三里塚の農民と同様の心境の人は少なくないだろうと思われる。これは当事者にとってのみならず、消費者にとってもこの上なく不幸なことだ。

野田首相はTPP参加に関連して「私は日本という国を心から愛しています」 、「母の実家は農家で、母の背中の籠にゆられながらのどかな農村で幼い日々を過ごした光景と土の匂いが物心がつくかつかないかという頃の私の記憶の原点にあります」などと発言しているが、前者は場違いな発言としか言いようがない。後者は、昔の女学生の発言かとみまがうほど感傷的であり、珍妙にしか聞こえない。問題は、TPP参加が日本と日本国民・市民にどのような影響を与えることになるかということなのだから、これに即して首相は具体的に応答すべきなのだ。農業の問題でいえば、農林水産省は食料自給率が現在の39%から13%に急落すると述べているわけで、首相である野田氏がこれについて具体的にどのように考えているかということが肝心なのだ。国民皆保険の問題に関しても同様で、大事なのは具体性なのだ。

上の野田氏の発言内容は意図的な話のすり替え、ごまかしなのか、そうでないとすると単に無意味な発言でしかない。野田氏が昔から朝しょっ中駅頭に立っていたことは有名だが、その姿をよく見かけたという人が自身のブログに「 野田佳彦という人 」という記事を書いている。それによると街頭に立った野田氏は政策についてはまったく語らなかったそうである。この人はたまたま高校が野田氏と同窓で、それもあってか選挙はいつも野田氏に投票してきたそうだが、首相就任に際して下記の記述をされている。

「 ずっと野田に投票してきた私だが、実は野田の政策はほとんど知らない。 野田は政策は全く語らないからである。/野田の駅頭挨拶の特徴はまったく演説をしないことにある。/「いってらっしゃいませ。野田佳彦です。よろしくお願いします」/支持者が言うのはそれだけであり、 野田はそれすらも言わない。微笑みながら何度も何度もお辞儀をするだけである。(略)/早大の政経を出て、松下政経塾を出た彼に政策や見解がないわけではないと思う。ただ、主張は必ず敵を作る。選挙活動家としての野田は、「とにかく船橋市は野田」というイメージを市民に与えることのみを留意して、政策はまったく語らなかった。船橋市民で野田に心酔する人はほとんどいないだろうが、彼を批判する人はまったくいない。熱狂はないが好感がある人を野田が目指したのならば、それは成功した。」


政策を語らない政治家とは、歌を歌わない歌手、記事を書かない新聞記者のようなもの、というのは言い過ぎだろうか? しかしどうやら野田氏は首相になってもその手法で押し通すつもりのようだ。国民生活に多大な影響を及ぼすこと必須の政策を国民にはろくろく説明もしないまま自分たちだけで勝手放題に事を進めている。有権者は完全に蚊帳の外に置き去りにされている。日本国憲法前文は、

「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」

と唱っているが、現政権は自民党同様、あるいはそれ以上に憲法を、そして国民・市民を足蹴にしている。

ところで、キューバのフィデル・カストロは、『カストロは語る』(青土社2010年)という本のなかで、2009年にホンジュラスで起きてたちまち失敗したという軍事クーデターについて、それは「中米においてブッシュが作り上げた構造を維持していたアメリカの極右勢力に後押しされ、米国務省によって支持されたものであった。」と述べているが、それとともに、何とそのクーデターの発生は、アメリカがラテンアメリカの各国に押しつけようとしたFTA(自由貿易協定)がうまく行かなかったことが原因だったとも述べている。以下に該当箇所を引用する。

「 帝国[アメリカ合衆国]はクリントン政権以降、FTA(自由貿易協定)を、いわゆる米州サミットを通じてラテンアメリカのすべての国に押しつける計画に邁進してきた。
 しかし、西半球に自由貿易を押しつける思惑は外れた。世界の他の地域の経済は順調に成長を続け、ドルは特権的な通貨としての独占的な覇権を失った。そして容赦ない世界金融危機が状況を悪化させた。こうした状況で、西半球で最も貧しい国の一つであるホンジュラスで、軍事クーデターが起こったのだ。」

このカストロ発言で思い浮かぶのは、韓国と米国の間で締結寸前まで行きながら、現在韓国内ではげしい反対運動がまき起こっている FTA協定のことである。ラテンアメリカ諸国が相手にしなかった米国の貿易協定の話に、 FTAとTPPの違いはあるが、韓国政府も日本政府も、熟慮も議論もなく安易に乗ってしまっているように思えてならない。
2011.11.16 Wed l 社会・政治一般 l コメント (2) トラックバック (0) l top
TPPに関して、ここにきてバタバタと医療分野についての新情報が政府から出てきている。一昨日の7日は、実は混合診療の全面解禁問題がTPPで俎上に乗っているというニュースを聞いて「やっぱり!」と思っていたら、昨日は「 TPP交渉で、米国が医薬品分野の規制改革を重点要求していることが、8日までに外務省が民主党に提示した文書で分かった。」(47news) という。国民・市民生活に重大な影響を及ぼすことが確実な政策の実体をこの政権は肝心の相手に隠して推進しているのだ。

「 民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT)は7日の役員会で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加問題に関し、8日の役員会で政府への提言案を作成し、9日の総会に示す方針を決めた。ただ、役員会おに先立って開かれた7日のPTの総会では、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の全面解禁がTPPで取り上げられる可能性を政府側が初めて認め、「国民皆保険制度の崩壊」を懸念する慎重派の抵抗が一層強まりそうだ。

 PT総会では、これまでの疑問に回答する文書を政府側が配布。混合診療に関し「議論される可能性は排除されない」と説明したが、「議論されても、国民皆保険制度を維持し、必要な医療を確保する姿勢に変わりない」と慎重派に配慮した。」(毎日新聞11月8日)

政府の「議論されても、国民皆保険制度を維持し、必要な医療を確保する姿勢に変わりない」との言い方は何とも弱々しく頼りなく聞こえる。農業問題と並んで、いやそれ以上に気になってならなかったのがこの「混合診療」の全面解禁問題であった。もしそんなことになれば、いずれ乳幼児の死亡率も、医療を受けられないがための死亡者数も格段に増えることになるだろう。また誰でも知っているとおり病弱のため日常的に通院が欠かせない人も世の中には大勢いる。医療現場では不平等と差別的言動や現象が横行することになるのではないか。これは想像するだに悲惨である。このような話まで出てくるとはちょっと前まで思ってもいなかった。ロシアのボリス・カガリツキーという経済学者は「グローバル化は国家の無力化を意味するのではなく、抑圧的な機能を果たすために国家の社会的機能を拒否すること、国家の側の無責任、民主的自由の終焉を意味する」と書いているそうだが、国家による社会的機能の拒否、国家の無責任、という意味では、野田首相や仙石氏・前原氏ら閣僚のこの問題への対応とピタリ重なるように思えてならない。藤永茂氏のブログによると、

「アメリカでは、保険会社から医療費支払いを断られて死ぬ人が一日平均約百人は居ると考えられています。また、個人の破産の人数では医療保険に加入していないために高額の医療費を支払うことを強いられての破産が最高です。」

アメリカの低所得者層が何よりも切実にオバマ政権に期待していたのは、「「単一支払い者制度(single-payer system)」、つまり日本やカナダや英国の制度に似た医療保険制度の政府一元化」(藤永氏)であった。2006年の一時点でオバマもこの制度新設を支持すると明言していたのに、結局オバマは医薬業界との繋がりの故であろう、実行しなかった。自分を心底から応援、支持してくれる層を裏切ったわけだが、そういう誰の目にも明白な欠陥制度の導入を受け入れなければならない恐れのつよいTPPなどにいったいなぜ日本が加わろうとするのだろう。むしろ日本は医療保険制度に関して米国に制度の欠陥、誤りを指摘してやるべき立場だろうに。これまで政府がこの問題を国民にひた隠しにしてきたのはそれを衝かれるのを恐れてのことではなかったかと思う。あらためて反対派・慎重派の懸念は正しかったということになるだろう。TPP参加を強力に推進する仙石氏の「反対派は反対することを自己目的化している」とか、前原氏の「おばけ」発言などのほうこそ、無責任で不真面目な放言ないしは恫喝だったのだ。これでは反対派から解任を求められるのも当然であろう。

「 日本医師会は、混合診療の容認に反対します!
社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあっては なりません。
医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」であるという考え方を私たちは持っています。
医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。
健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。
混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。
混合診療は、このような考え方に真っ向から対立するものだからこそ、私たちは強く反対するのです。」(日本医師会ホームページ)


毎日新聞は昨日の8日、「 正念場の首相 もっと国内でも雄弁に」との社説を載せていた。毎日は朝日や読売などの大手紙と同じく TPP参加に賛成する立場で、社説はそれを前提として野田総理にTPP参加に関する説得的な説明を求めていた。

「 交渉参加に十分な国民的合意がなお得られていないことも事実だ。毎日新聞の世論調査ではTPP参加について最多の39%が「わからない」と回答している。政府から十分な情報と判断材料が提供されていない表れだろう。」

「 十分な情報と判断材料」どころの話ではない 。私たちは一昨日の7日に初めて混合診療全面解禁について知らされたのだ。これは意図的なもので、政府は国民に本当のことを知らせたくないのではないだろうか。知らせると反対者が増えるばかりだから。こういう時、本来ならメディアこそが混合診療のことなど率先して調査取材すべきだったと思うが、政府と一緒になってTPP参加に前のめりになっているのだから、救いがたい。

外部に対する発信が極端に少ない野田総理はTPP参加に関して 「国益のために」と一言ポツンと話していたと思うが、その国益論は、アメリカに気に入ってもらう政策を選ぶこと、とでも考えているのではないのだろうか。恐らくは本心から。ある新聞に「国民は眼中になし」という見出しが出ていたが、これこそ野田総理および閣僚の本音ではないのだろうか。TPP問題のみならず、安全保障問題への対応を考えてみても、どうもそのように思える。メディアも政治家が「国益のため」とさえ口にすれば、それでかなりの部分納得するようだ。 心中は国益という言葉に汚染または呪縛されているのではないかという気がする。毎日はまた、

「 日本の自由貿易圏づくりへの参画は経済発展に不可欠で、交渉参加は農業の基盤強化などにも資すると私たちは考えている。党内調整に全力を挙げるよう、改めて求めたい。 」と述べている。

TPP参加が「経済発展に不可欠」だというのなら、参加後どのような経路を辿って日本国内の経済が発展するというのか、判断の道筋を示してもらいたい。さらに、毎日の社説は、TPP参加は「農業の基盤強化にも資する」と述べている。農業従事者の大多数は、TPP参加が日本国内の農業に壊滅的打撃を与えると判断しているからこそTPP参加に反対しているのだ。そしてその判断は私たち消費者にも納得のいくものだ。毎日はTPP参加が農業の基盤強化に役立つというのなら、どのような方策をとることによってTPP参加と農業の基盤強化が結びつくのかを示すべきである。そうでないと、適当にことばを弄んでいるとしか感じられない。それから、ここで取り上げられている経済発展と農業問題以外のこと、たとえば混合診療の全面解禁の問題についてはどう考えるのか、メディアはそれらをも総合的に考察・勘案して初めて結論を出すべきだったと思うのだが。
2011.11.09 Wed l 社会・政治一般 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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