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「松川事件のうちそと」には、第二審判決の日(1953(昭和28)年12月22日(一審判決はこれより3年前の12月6日、福島地方裁判所で行われた)の法廷の模様の録音が掲載されている。これは短い記録映画として今も残っていて、私はこのビデオを昔知人に頂戴して今も持っているのだが、法廷の場面はほとんどカット写真のみで構成されているが、被告人たちの怒りのみなぎった顔つき、それから裁判長との激しいやり取りの声音から、その場の緊迫した光景が目に見えるようである。着席した裁判長はまず主文「原判決を破棄する」として3人を無罪とした。法廷にホッとした気配が漂ったかにみえた瞬間、裁判長は、「被告人鈴木信、同本田昇、同杉浦三郎、同佐藤一を各死刑に処する。被告人二宮豊、同阿部市治を無期懲役に処する……」と、残り17人に一審とほぼ同様の重判決を読み上げていった。松川事件のある裁判長が、被告たちの鋭い追求をうけて「やっているかやってないかは神様しかわかりません。」と述べたことは有名だが、その発言が飛び出したのは、この日、この仙台高裁の裁判長によるものであった。だが、松川裁判の最初から最後まで岡林弁護士と共に終始一貫主任弁護人として力を尽くした大塚一男弁護士は「回想の松川弁護」(日本評論社2009年)のなかで、この日の判決言い渡しは裁判長の「本日の判決は確信をもって言い渡す」という自信満々の前口上で始まったと述べている。それでは、広津和郎の短くも印象的な紹介文につづいて「第二審判決の日の法廷」を掲載する。(太字、下線による強調はすべて引用者による)


 次に掲げるのは、控訴審判決期日における公判廷の模様を、速記並びに録音によって整理したものであるが、この松川裁判の性質を端的に示すものとして、われわれに多大の感動を与える。」(広津和郎)

  第二審判決の日の法廷
    ○
 午前10時開廷、裁判長は判決文構成の項目を説明して後、判決要旨の朗読を始め、主文を告げ、判示事実の朗読を続けていった。
 判決要旨の朗読にはいってから18分後、
佐藤一被告 裁判長、それは何です、読んでいるのは、
裁判長 発言を禁止します。
佐藤一被告 第一審の判決をいい加減にして、また、まるででたらめを言ってるんじゃないですか。
裁判長 最後まで聞いて下さい、発言を禁止します。
佐藤一被告 そういう判決は、我々は承服できないのです。
裁判長 発言を禁止します、それに承服できなければあとで方法があります。
鈴木信被告 裁判長、聞くのは結構ですが、私達の聞きたいのは事実関係についてどうのこうのという解釈論でなく、何故真実とあなたの判断がくい違いがおきたか、その根本的理由を聞きたい。
裁判長 後で説明します。
鈴木信被告 スパナーで抜けるかどうか、バールが線路班のものかどうかが問題でなくて、もっと根本的なもので、裁判長のそういう解釈論というのか何か有罪だという考えがあって出てくると思います。だから、それでそこまで到達した過程を聞きたい。
裁判長 あとでそれは説明します、とにかく続けます。
鈴木信被告 いや、例えば電話連絡について事実関係をどう解釈するという小さな問題でなくて、あなたは何故我々とまるで違った判断をなすにいたったか……
裁判長 私共としては被告達のおっしゃることも充分検討して、詳細に検討したつもりですけれどもね。
鈴木信被告 冗談じゃないですよ。
裁判長 とにかく発言を禁じます、今まであなた方のいう事は充分聞いたのです、今日は聞きなさい。
鈴木信被告 聞きますけれどもね、結局11日に電話連絡があったとか、なかったとか、あの自在スパナではずせるかどうかという問題でなくて、一体何故事実とかけはなれた……
裁判長 とにかく説明を先に聞きなさい、不服申立ての方法がありますから、途中でそういう事を言われても困ります。
鈴木信被告 聞かないとは言いませんよ。
佐藤一被告 あまりにも事実と違いすぎるですよ。
裁判長 違う違わないはない……
佐藤一被告 今までは黙ってききました。しかしこういう判決を聞かせられては黙っていられません、どうして真実を曲げたかその根拠を示してもらいたい。
裁判長 それは見解の相違ですよ、我々はこの事実を認めたのですから。
佐藤一被告 そんな簡単なものでないですよ
裁判長 あんまり聞かないなら退廷してもらいます。
鈴木信被告 聞きますよ、聞きますけれども、あなたはここで不服なら上告しろとおっしゃるけれども、なるほどあなた方としてはそれは流れ作業でよいでしよう。それは責任のがれです。例えば第一審ではこうだった、不服なら二審へもっていけ。これをやるのに確信があるなら……
裁判長 いや無論我々は確信があってやっているんです、しかしながら不服があれば仕方がない、我々は決して流れ作業でその場の責任逃れをやっているのでない。
武田久被告 何の為に2年間やったか問題ですよ、事実とかけ離れた判断をしている。
裁判長 発言を禁じます、これ以上発言するなら退廷を命じます、被告達に無論聞いてもらわなければならないけれども、傍聴人、弁護人にも全部に聞いてもらう。
鈴木信被告 それではあとで発言の機会をいただけますか。
裁判長 あなた方には最終陳述でも充分述べる機会を与えたつもりです、今日は被告達の発言する必要はないです、検察官も弁護人も発言する必要はない。
佐藤一被告 我々はその必要ないような裁判を願ってきたのですよ。
岡田十郎松被告 裁判長、我々は4人も殺されたらどうするんです、我々は何もやっていないのだよ。
裁判長 言うなら静かに言って下さい。
蓬田弁護人 裁判長、被告の云うことを聞いてやって下さい。
裁判長 では代表で鈴木被告に10分間発言を許します。
鈴木信被告 とにかくですね、問題はあなたが言われるような、ささいな枝葉末節の解釈の事でなく、裁判長が如何なる判断をなされようとも真実は唯一つであり、絶対に動くものでありません、不滅です。問題にするのは、あなたはなんとおっしゃっても我々は実際やっていない。全くやっていない……
山本弁護人(高橋陪席裁判官を指し)、にやにや笑っている! にやにや笑ってよくないよ。
裁判長 静かに静かに(廷内騒然)
二宮豊被告 まだ笑っている。
高橋裁判官 それは……
岡田十良松被告 人を殺すときに笑っている。
高橋裁判官 おかしくないですけれど、笑うのは僕のくせでね。
杉浦被告 我々は真剣だ、高橋裁判官は笑っているとは何事です。
岡林弁護人 裁判長は直接死刑に手を下すのではないでしょう、しかしいやしくも人を死刑の宣告をなすときにニタニタ笑うような裁判官に我々は断固として抗議せざるをえない。顔を洗って出直していただきたい。言渡しをやるなら顔を洗って真剣な気持で判決がされることを要望します。我々は裁判官の笑いながらの判決を聞く事はできない。人道上の犯罪ですよ。
梨本弁護人 今朝の新聞を見ますと一部有罪一部無罪という様な報道がなされている。このことに非常な疑問を持たざるを得ない。この点について裁判所の釈明を求めます。
裁判長 とにかくやります。
蓬田弁護人 裁判長、延丁に命じて鏡を法廷に持って来て下さい。高橋陪席裁判官の前に持って来て笑い顔を反省させて下さい。裁判の権威を失墜させるものです。
岡林弁護人 裁判長は法廷指揮権を持っていられる、裁判長、同じ構成裁判官の一人が死刑の刑を4人に言い渡す最中において、ニタニタ笑っていられる、そして笑うくせがあると言っていられる、この様なことをいやしくも人間性のあるものが黙っていられますか、いやしくも人の魂をもっているものが。けだものの行為です、野獣の行為ですぞ。笑う様な顔を洗ってかかって下さい。(騒然)
高橋被告 今までいつも居眠りばかりしてきたんだ(註 高橋裁判官は公判審理中によく居眠りするので弁護人より注意された)
本田被告 無実で殺される私達の身になってごらんなさい。
岡林弁護人 一寸待って下さい。私がけだものの行為と言った時に瞬間的にまじめになられた。それ以前も以後もにたにた笑っていられる。私は真剣な評議が行われたとは考えられない。この法廷においてニタニタ笑っていられる様な態度では私は裁判所が真剣に反省されて評議し直されんことを求めます。
裁判長 高橋裁判官に注意します。
岡林弁護人 どういう注意をされるのですか、我々が今言ったようなことを。
裁判長 とにかく緊張してまじめにやって、心ではまじめにやっておられるでしょうが外観においても。
太田被告 今まで居眠りして来たんだから。
鈴木被告 とにかくどんな判断をされようとも私達は実際やっていないのだ。実際関係はない。このことは私は裁判の法廷で再三述べましたが、全く真実と離れた判断をされるか、その点が非常に心配だったんです、それは一番危険なのは新聞に出ているいわゆる心証というやつです、心証程危険なことはありません、これは判断の誤りを起す一番大きな原因です、それで我々は常に客観的な事実だけはいかなる偏見にも迷わされず、主観も入りません、だから客観的事実のみによって判断して下さいということを、繰返しくりかえし述べて来たんです。所が第二審法廷で2年間のあの調べで少くとも我々に不利な証拠というものは何一つ出なかった。事実審理の過程において我々に有利なもののみが出たということは、裁判官も御存じの事と思います、だからもっともっと調べれば必ずもっと有利なものがどんどん出て来ると思います、だから私達が問題にしたいのは実際やってない我々に対して有罪という判断が成立するかという事です、その過程においてなぜ誤ったものが出てくるか、その原因を我々が分析をしなければならない、そこに問題がある、その点を明確にしてもらわなければならない、そこで我々が一体実際やっていないのに、その様な死刑の判決を我々に聞けというのは、一体無理な話じゃないでしょぅか。
裁判長 裁判は裁判所の認定した事実と法律の適用によって宣告しなければならない、宣告した以上は終りまできかなければいかん、そして後でそれでこういう風に認めたという根拠を控訴理由の判断の中に折り込んで説明しますから。被告は絶体やらないと主張しておるが……
(被告はこもごもに) いや主張でなく真実です。
 証拠は我々の無罪を証明しているじゃないか。
裁判長 それは後で説明します、それで不服であれば仕方がない、裁判所の事実の認定は証拠によるんです、それで不服があればしょうがないです。
鈴木被告 やらなくとも死ねというんですか。
裁判長 それ以上聞いたって仕方がない、あなた方の言うことは皆聞いた筈です、あなた方の言い分はのみこんだつもりです。
被告 つもりだったら無罪だ!
裁判長 暴言をはくな!
被告 暴言ではない。(廷内騒然)
岡林弁護人 裁判長、被告諸君はこういう事を言っているんです、被告達は目の前で自分が殺され、あるいは同僚が殺されようとするのに対してだまっていることは出来ない、それは人間の普通の感情ではないですか、これはすなわち裁判所が裁判所としては目の前で殺すという実感を持たないで判決されるということが示されている、それは高橋裁判官がニタニタと笑っていた態度にもあらわれている、裁判所はまだあとがあるので今自分が刃を持ってするのとは違うという意識を明かにもっている……
裁判長 そんなつもりはありません。
岡林弁護人 しかし被告達は目の前で自分達が殺される、自分達を殺す手をひしひしと感じておるのです、人間が目の前に刃がかかってくるならば防ぐ本能を持っておる、そういう意味で自分達はただだまってはいられない、また一方裁判官の一部に判決の途中でニタニタ笑い容易にこれを反省されず、被告および弁護団の抗議に会い、裁判長から注意を受けてはじめて普通の顔にかえっている、こういう状態では一応裁判所もそういう気持を警告されるだけでなく、その警告は目の前で一寸つくろったにすぎない、裁判所が全体として厳粛なる気特を持って出直して判決されることを要望します、裁判所にその様な厳格な気持のなかったことを反省され、裁判所として厳格な気持を持直して宣告にのぞまれることを希望する次第であります、私はそれが正しい裁判のやり方であると考えます、裁判長は新聞紙上で拝見したことによるとすべての人々を納得させるつもりで裁判は行うと言っておられる様であります、それならば裁判官が宣告の最中、ニタニタわらうようなのでは、一体すべての人々を納得させると言っても納得するものは一人もいないであろうと私は考える、それ故に裁判所の猛反省を望む次第です。以上。
裁判長 とにかく続けます。
佐藤一被告 裁判長、私は裁判長の宣告によって生命をうばわれるものであります、しかしながら、裁判長、私はまた私以外の全部のものはこの事件には全然関係はないのです。あなたは先程我々の発言は聞いて来たと言っておられる、しかし今になって考えればそれはとんでもない。我々の発言を真に聞いてそして法廷に出された証拠を見るならば必ず無罪の判決がある筈だ、我々の発言を本当に聞いたならば必ず今日この法廷では無罪の判決がある筈です、それがない。我々を有罪にする証拠はない。何がある、証拠はないが、拷問によってデッチあげた白自調書以外はないではないか。
裁判長 後で説明します。
佐藤一被告 デッチあげた自白調書以外ないではないか、そこに我々に対する偏見があり、公正をよそおって検察官と同じ立場に立って、我々をただ死地に追いやろうとする態度ではありませんか、私達はこういう裁判には絶対承服出来ません、裁判官も記憶しておられるであろう、私は7月23日の公判廷で言った、この裁判が単にこの法廷だけで闘われてきたのではない、全日本、全世界からあらゆる関心が寄せられ、あらゆる支援がよせられて闘われて来た法廷なんです。だから法廷だけを納得させるだけでなく、全世界の人々、全日本の国民を納得させる様な裁判を要求した。裁判長もその時うなづいたではないか。
裁判長 そのつもりで判決しています。
佐藤一被告 そういう判決では絶対ない。
裁判長 それは見解の相異です。もうこれ以上聞いてもしようがない。分りました。
鈴木被告 見解の相異と言いますがね、そうじやないですよ。あなた達はそう思うと言っても実際やっていないんですから。
裁判長 やっているかやってないかは神様しかわかりません。
被告 我々は知ってるんだ。
裁判長 黙らないならあなたがたに退廷してもらうより外ない。まだまだ我々が聞いてもらいたいことは用意してあるんです。それをみな聞いて下さい。
鈴木被告 やっていないものを殺すというのか。
裁判長 とにかく続けますから。
杉浦被告 裁判長、そんなことを長々しく聞く必要はないですよ。我々の無罪だということは、証拠関係でもってはっきりしている。何故有罪にしたかということについて誰の命令を受けているかということだ。一体誰の命令で無罪を有罪にするのか。
裁判長 誰の命令も得ません。裁判に誰の命令もいりません。
杉浦被告 あらゆるものは無実の証明をしている。それを、その証拠を全部けとばして……だれかの命令でなければ出来ない。
裁判長 命令は誰にも受けていません。
被告 うけている。
裁判長 これ以上発言するならば退廷を命じます。黙って聞いてる人はいいが。
本田被告 裁判長、これは自分の良心に従った判決ですか。
裁判長 勿論。
(裁判長は判示事実の朗読を続けること4分)
佐藤一被告 裁判長! 私は裁判長が我々を納得させるような態度をとらないで、この判決を続けられる。異議がある。こういう判決はやめてもらいたい。そして出直してもらいたい。正しい判決をしていただきたい。
裁判長 やめません。そんなら佐藤一に退廷を命じます。
鈴木被告 どうして退廷を命じるのですか、私は正しいことを言っている。
裁判長 退廷しなさい。裁判所は双方の言うことを聞いてこう言うのですから。
佐藤一被告 裁判長は如何なることを言おうと真実は一つあるのです。とにかく最後まで闘いますからいいですか。我々は全世界の支持があるのです。
裁判長 退廷を命じます。
 (被告全員起立。佐藤一被告を退廷させようとする廷丁も看守もいない。)
裁判長 腰かけなさい。
佐藤一被告 必ず最後に歴史が真実を明らかにすると言った。しかし歴史をまつまでもなく私達は裁判長が国民の声に耳を傾けて真実を明らかにすることを確信しておった。しかし確信をうら切られたのだ。だから私はこの法廷において真実を追求する為に国民の皆さんの支持をお願いして最後まで必ず闘います。いいですか。はっきりと今日のことを肝に銘じてもらいたい。いいですか、私はもう言うことはない。
裁判長 それならばこれから黙って聞くか、きくならば退廷を取り消す。
杉浦被告 裁判長は何人の……
裁判長 とにかくやります。
高橋被告 ウソの判決を撤回しなさい。
裁判長 判決の撤回ということはありませんから、そんなことを言うなら高橋被告は駄目です。 退廷を命ずる。そういうことはありますか。あなた方は聞かないですか。
被告 聞きます。
裁判長 だまって聞いたらいいじゃないか。納得できないならば今言い渡したその理由を言う訳なんだ。最後まで聞いて下さい。君達は無罪以外納得出来ないなら退廷を命じます。とにかく静かに聞かないなら退廷を命じます。
被告 退廷々々と脅迫だ。
裁判長 脅迫なんかしません、警告しただけだ。
佐藤一被告 我々は納得できる判決を聞きにきたんです。それに退廷しろとは何事ですか。
裁判長 裁判の宣告をさまたげることになる。
佐藤一被告 我々は真に正しい裁判が行われるならばさまたげない、だから納得行く様なことを…
裁判長 有罪判決を聞こうとしない人は退廷してもらうより外はない。
弁護人 先程岡林弁護人からも言いました様に、あなたが今判決を言渡しているわけです、それに対して被告の発言を何時までも聞く訳にはいかないと言っておられた。しかし被告は何時までも聞いてほしいと言っているんでないです。
裁判長 だから先刻鈴木被告に10分間許しました。
鈴木被告 10分間しませんよ。
裁判長 一体言渡しの時に被告の発言をいつまでも聞くことが出来ますか。
弁謙人 裁判長は事務的に考えている。
裁判長 考えてません。
弁護人 それでは裁判にはならない。退廷を命じて死刑を宣告する、それは国民の納得する様な裁判になりますか。
裁判長 今になってはしようがないです。
被告 しようがないではすまないよ。
裁判長 そんなら立ってる被告全部退廷を命じます。
被告 私達の証拠は無罪です。
 裁判長! ききます。
裁判長 だめです、聞かないと同じです、退廷を命じます。
 (金員起立の被告着席)
袴田弁護人 休廷してもらって気分を新たにしたらどうですか。
裁判長 休憩はしません。円満にやりたいと思う。
蓬田弁護人 円満にやりたいと思います、その方法としてはこの情勢に政治性を発揮したらどうですか、この空気は裁判所側が挑発している、厳格な気持を回復して裁判長自身も気持をひきしめて気分を新たにして出直してやったらどうかと思います。このままでは徒に混乱する。
裁判長 どうすればいいんです、休んでも立ったり入ったりで相当時間がくうんです。
蓬田弁護人 今日は夜の12時まで時間があるのですから、人殺しをする重大な時に12時まで時間があるんですから、徹底した人間性がなければ公正な判決は下せない。
裁判長 被告が退廷すれば事務的になされることでしょう。
弁護人 このままではいけない、休廷を。
岡林弁護人 休廷の前に一言、裁判は事務的な処理で出来るものじゃありません……
裁判長 結構でないことは知っています。
岡林弁護人 私は実におだやかでない気持を持っている、裁判官がニタニタ笑うということは未曾有のことです、この事件ではじめて行われたものである、私自身も落ち着きたいと思います。裁判官もやはり人間である以上は神様でないということをよく言われましたが、おだやかでない感情を持たれたにちがいありません。これはやはりお互いが人間同志であるならば一寸空気をぬくべきではないでしょうか。
鈴木被告 無実の罪で死刑の判決をされて、あなただったらどうしますか。
裁判長 法律に従って責任をおいます。30分休憩します。(午前11時5分)
岡田被告 なにもしないのに殺されてたまるか。
本田裁告 私は裸にでもなににでもなります、何にもしないのにたまったものか。
裁判長 傍聴人退廷して下さい、30分後に初めます。

 (午前は結局11時15分休廷となり、午後1時から開廷された)
 (午前とひきかえ午後は裁判所の一階から三階の法廷まで、仝廊下を蟻の出る余地もない様に警官と看守は一列にならんで警戒した)

岡林弁護人 裁判長、あの警戒は何です、威圧しているんです、階段の下から上までずっと列を作って今にもとびかからんとしております。
鈴木被告 一体無実の我々を殺す裁判をするのにこの警戒は何だ。そんなことしなければ裁判はやれないのか。我々は真実をもっているから逃げもかくれもせん、誰が警官を動員した。
裁判長 そんなつもりでやったんでないです、あれは私だけでないです、私は法廷検察権しかもっておりません、それぞれの責任者がやっております。
鈴木被告 このざまは何だ。裁判長、今までの我々の審理に対する態度はみたでしょう、極めて紳士的にやってきたのだ。
佐藤一被告 我々は午前の裁判によって裁判長の正体を見破った。公正をよそおって人間性と良心を失った裁判に憤激した。憤激したために我々は抗議した。それを裁判長はにべもなく却下し退廷をもっておどかした。しかし我々は弁護人のなだめによって一応聞こうという方針を出した。聞いて裁判官が如何にデタラメの裁判をなすか聞こうと、全世界の人に知ってもらおうという気持になった。しかしながらこのものものしく警戒する態度を見ていると、どうしてもこれ以上聞くに耐えない。我々は裁くものは裁判官でなく本当は大衆である、国民であるということをまざまざとこの法廷でみせつけられた。これ以上法廷にいる事はできない。そして真実を守って国民大衆の判断によって、国民大衆に訴えることによって、国民大衆の支持のもとに我々は明らかにして堂々と争う。勿論我々はにげかくれしません。私は裁判長の不正な態度、良心を失った態度に満腔のいかりを以て抗議する。私達は退廷する。
(被告こもごもに)我々の顔をよくみておけ。
 我々は最後までたたかう。
 貴様らに殺されてたまるか。
 俺の顔をよくみろ。
 真実の強さを見ておけ。
 あれは売国奴だ。
佐藤一被告 弁護士諸先生に申し上げます。私達は先生方の真面目な態度にあくまでも真相を究明された事に深く感謝しております。この法廷で私達の無実が明らかになり無罪の判決がきまるものと期待して来ました。しかし判決の結果はこうであります。そして午前中判決を聞いた結果どうしても怒りを押える事ができなかったのであります。その為に裁判長に抗議しました。我々は裁判長に釈明を求めました。しかし納得いくものではありません、そのため休廷になり、一応もう少し聞いて如何に裁判官が事実に反した辻つまの合わない裁判をするか聞いて、その結果を日本の良心をもった人々に訴えてゆこうというようにきまったのでありますが、しかし、私達は食事をしながら考えますに怒りを禁じえませんでした。ほんとうに禁じえませんでした、このものものしい警戒をみた時更に怒りが爆発したのであります。どうしても法廷にとどまって、判決の朗読を聞く事はできないのであります。私達は勿論逃げ隠れもしません。あくまで真実を守って真相を明らかにする為に堂々と闘います。今後とも諸先生方の絶大なる援助をお願い致します。
岡林弁蕃人 全力をあげて我々はやります。
弁護人 決意にそむかないように闘います。
佐藤一 全力をあげて闘うと言うことをおききしまして、またみんな闘うという事についてせつにお願いします。

 (被告全員退廷)

岡林弁韓人 弁護人も退廷せよという意見がありますが如何いたしますか。
袴田弁韓人 私は弁護人として最後まで退廷しないつもりです。
上村弁護人 一点言申し上げます、被告諸君はこういう判決をきく必要はないからというので我々は午前中協議致しまして、聞く方がいいという意見だったのでありますが、午後になって被告が帰った故のものは、警官の板締りの態度に憤激したもので、私も実に少なからず憤激したのであります。こういう無理な判決を無理な形でおしつける事は被告にとって耐えられないものであったと思います。我々は法廷指揮を守らなければならないけれども、被告が退廷したところで弁護人だけおめおめとして言渡しをきく必要はないと思う。弁護人は居る必要はないと思う。ですから私は全員退廷する事を弁護人諸君にすすめたいと思う。被告が一生懸命聞くなら我々も聞かなければならないが、被告が聞くに耐えない判決とこの法廷指揮に対して、被告がいないところで聞く事はむしろ弁護権の行使でないと確信するのでありますから、全員退廷することをおゆるしねがいたい。
袴田弁薄人 判決文をみればわかりますが、できるだけ早く判決を頭の中に入れる必要があると思う。団体行動に反することになるかもしれませんが私は最後までのこります。
岡林弁護人 我々は判決がデマ宣伝に使われるということが予想されるので、世上に流されるそれに対しては反撃しなければならない。それは被告に対する義務であると思う。そのために判決文ができて吾々の手元に渡されていれば退廷してもいいけれども出来ておらない以上は要旨だけでも一応聞いて、できる限り、如何に判決が誤っており、許すべからざるものであるかを反撃した方がいいのでないでしょうか。私達も非常な憤激をもっております。御承知のように私は気が短いけれども、これは被告諸君が聞くに耐えなくとも、その点は被告諸君ほどには直接でないだけにいくらかは聞きうる余裕をもっております。そして世間に訴える余裕をもっている。あくまで聞いて訴えるという趣旨の方がいいではないでしょうか。
上村弁護人 聞くのは一応義務と考えますが、この世紀の判決に対して被告がどうしてもここにとどまる事ができないと言って弁護人の静止を聞かず、協定を破って出ていった。しかし我々はどこまでも弁護人なんです。被告の利益を擁護する弁護人であり、それ以外の何ものでもない。かくのごとき事態を出現させたのは、すべからく裁判所の責任であろうと思う、そこで被告なしに我々はきいたところでどうにもならない。しかしきかないと言っても、これは判決があればあとで書面でわかる事である。我々は弁護の熱誠にあふれているから、こういうところで聞くのは辞すべきであろうと思う。
岡林弁護人 我々は退廷するのに控訴審だから了解は必要ないんです。
梨本弁護人 私は御前中裁判長に釈明を求めました。新聞紙上で、本判決が一部有罪、一部無罪という事が報道されている。しかも裁判長が判決を書いているその場面が新聞紙に写真としてのっている。これらの事実を綜合するならば、この判決が事前に外部にもれた事を想像せざるをえない。そのような想定のもとに本日のような戒厳令下にある様な事をしたと考えざるをえない。弁護人が出入するところまで人垣の警官によって警戒するという事は、私は裁判史上このような経験をもっていない。これはこの判決は、国民を納得させる判決でなくして、国民の納得しない判決を押しつけようと権力と武力、ピストルによって押しつけようとしたものと判断する。それ故にこの疑いが私個人の疑いなら私は考え直しますが、しかし客観的にこのような事実が我々の眼前にある新聞紙上に判決を書いている写真がのっている。この点について裁判長の釈明を求めます。
裁判長 新聞の点は絶対洩らした事はありません。写真はとらせましたけれども、しかしこの場合は用意周到に我々が書いているものは全部うつらないようにしたつもりです。記録はいやしくもその様な事のないように注意しました。
梨本弁護人 判決を書いている現場に報道者を入れていること自体は判決が外部にもれることをおそれるものである。
裁判長 役所で判決を書いている場面でしょう。あの部屋しかないですよ。そこで新聞記者に会うので、あそこしかない。別に判決をもらすようなことはありません。それ以上はあなた方が勝手に想像されても答えようありません。
岡林弁護人 私が非常に新聞の点について疑問に思っておりますが、これは大変失礼かと思って、だまっていたが、11月下旬、裁判長は最高裁判所の真野(マノ)さんに東北のどこかの温泉でお会いになったことはありませんか。
裁判長 そんな事は絶対にありません(苦笑)真野裁判官の名誉のためにも。但し視察にこられた事はあります。その際庁員一同と外に弁護士会の代表者が来られたと思います。そのとき以外にはありません。
岡林弁護人 そうですか、別に疑っているわけではないんですが、ただ新聞にもれている疑いがあるので失礼ですがお聞きしたわけです。
裁判長 ただ最高裁の方が来る事はあります。最高裁の人が来た時はその様な所にご案内する事はありますが、11月下旬は私は判決文を書くためにいそがしかったのですから絶対に行っては居りません。
能勢弁護人 法廷指揮権の問題について一寸おたずねしますが、東京その他では法廷外も構内も裁判官の指揮権内にあるような説がある様ききますが、裁判長は法廷指揮権は法廷内のみに限ると先刻来おっしゃっておられるが…
裁判長 法廷内のみとは言っておりません、法廷内は勿論、それに接着する廊下などには及ぶと考えている。
能勢弁護人 私は廊下の只今の状態はあまりひどいと思います。被告はそれに憤激致しまして午後からの裁判はうかがうことは出来ないと言う様な興奮状態に達しておりますので、そのことによって被告のいない空白の法廷を持たなければならない。上村先生の言われる様に私達は弁護人なのでありますから、被告人なしにこれをきくことは堪えないのでありますが、そういうことはやはり裁判長の拒揮権の下に行われたということを私共は見てよろしいでしょうか。
裁判長 私はそういうつもりでやっておったのでないですから、そう言う風にお考えになられたんでは……廊下はせまいもんですし、カメラマンの出入等もありまして、そういうことになったのでないかと思いますが実際私はその場面を拝見していません。
能勢弁護人 カメラマンはずっと端の方にいましたが、私共がズーッと通過して来るところは全く人垣の中と棍棒の中を通って来なければならない。弁護人が午後からの発言につきましても威嚇をうける様な状態でここに入る様になりました。そういうことがやはり裁判官の指揮権の中だと言うことを確認してよろしいですね。
裁判長 そういう事になるでしょう。ただ庁舎管理権と競合する場面もあると思います。
蓬田弁護人 午前におけるこの法廷を中心とする警戒ぶりと午後における極端な警戒ぶりとは法廷は非常な差がある。しかも裁判長は平穏の中に判決を言い渡して職責を全とうされるという考えのもとにこの法廷にのぞまれたと思います。その時に法廷を中心とする廊下、接着する場所について、この程度の警戒なら判決は最も効果的になされるというお考えのもとで入廷されたと思います。ところが午後は午前と異なり警官の人垣の中をずうっと通ってこなければならん。あえて私はかくのごとき武装警官が何十万押寄せようとびくとも致しませんが、何の必要があって午後に更に動員されたか。その具体的理由、しかも開廷以前に岡林弁護人から法廷外の警戒を解いていただきたいと言った。それを依然としてとらない。さような事をしなければ言渡しができない様な具体的危険が発生しているか。その点をはっきりごまかさないで我々の納得いくような釈明を願いたい。しかも今、被告は退廷している……尚且つ警戒をつづけられるか、御答弁顕いたい。
裁判長 午前も午後の警戒も、私は無論法廷に警察官がいるという考えはもっておりません。どっかの部屋に待機しているという事は知っております。しかしこの法廷を警戒してくれとかいう指図は一切しておりません。
岡林弁護人 その様な問題に就て我々が不当と思う点はまた後で述べる様にしますが、我々自身が如何なる武力によって脅かされ様とも屈するものではありません。しかしこの場合私はやはり上村先生の御意見もありましたけれども、弁護人と致しましては裁判長が読み上げられ様としている判決が如何に不当であるかということも大体今まで現われたところでも感じ、また一部分判っても居ります。しかしそういう点を更に直に、本日我々がある程度の結論を出し得る様にするために、早くききたいと思います。そしてどうかいそいで朗読していただきたいと思います。それは上村先生に対しては私はまことに言いにくいのでありますが、やはり弁護人といたしましては被告諸君は単に感情のみで動くのではなくして、その感情には寄りどころがあると言うことをあきらかに示したい。被告諸君が何故に憤激するかと言うことを判決の事実について示したいが故に、しのぶべからざるをしのんで、此処に聞こうとするのであります、早く読んでいただきたい。尚、只今、裁判所の前で松川事件公正判決要請大会が行われており、そこから大会において三つの項目すなわち、
一、裁判の即時打切り、裁判の公正を期するため裁判のやり直しをせよ
二、三裁判官の即時罷免
三、二〇名の被告即時釈放
こういうことを裁判長に申入れたいから弁護団から斡旋を願いますというのがきています。けれども現在は私はやはり言われかけたことはききたいと思います。後でこれらの人達とあるいはうかがう様になるか判りませんがおききをねがいたいと思います、私達は早くききかけたことはききたいと思います。
――以後判決理由の要旨を裁判長朗読、午後3時15分閉廷――。 」


判決に憤激した被告たち

   佐藤一の声明書朗読

 第二審の判決で第一審同様死刑の宣告をされた佐藤一君は、前から病気で執行停止になっているため、直ぐ拘置所に戻る必要はなかった。そこで判決が終ると、裁判所前に降りしきる雪をおかして集まって、この日の判決を待っていた群集の前に立って、音吐朗々と左の被告団声明書を朗読した。

  「真実を踏みにじって本日、鈴木裁判長は有罪の判決を下した。これは裁判長が良心をすて、独立を失い、人間性を投げ捨てたためである。二十名が無実であり、無罪であることは一切の証拠からまったく明かである。裁判官がどう判決しようとも真実は唯一つであり、決してうばい去ることはできません。我々はこの真実を守ってあくまでも闘い、必ず松川事件の真相を明かにし、国民の皆様とともに、正義と自由のために闘うものであります。国民の皆様、全世界の皆様、どうか絶大の御援助をお願いします。
  一九五三年十二月二十二日正午        松川被告団 」

 この佐藤一君の声明書朗読は、録音で聞いても堂々として気塊に溢れたものであった。法廷における発言やこの声明書朗読が、余りに元気に溢れていたので、それをラジオで聞いた東京の官憲では、あのような元気横溢した発言をする人間を、病人として執行停止にして置く必要はないといって、直ちに仙台の警察に、執行停止を取止めて収檻するようにとの命令を下したが、それを知った袴田弁護人が裁判長に交渉して、やっと事なきを得たというようなエピソードもある。」(「松川事件のうちそと」広津和郎)

上述のように広津和郎は、病気(肺の病)で入院中の佐藤一被告が仙台裁判所前で被告団声明書を驚くべく元気に読み上げたことを書いている。私もビデオでこの場面を見ているが、本当に佐藤被告は病人どころか、気力横溢の健康体の人のように見える。おそらく、憤激、怒りがあまりにも大きく、メラメラと反骨心が燃え上がっていて、意気消沈どころではなかったのだろうと思う。

それにしても、自ら17人の被告人に対し、死刑4名、無期3名をふくむ重罪を課した裁判長が、当の被告人にその判決の根拠を追求されると「やっているかやってないかは神様しかわかりません。」とか「見解の相違です」という返答をしようとは…。前代未聞であるだろうが、この事実こそ松川裁判の性質をよく物語っているように感じられる。なお20人の被告人のうち、3名の人(斎藤、武田、岡田)はこの日無罪となった。その理由は二回行なわれたという国鉄と東芝間の列車転覆のための謀議のうち、一回目の謀議に首謀者として出ていたはずの一人の被告人に隠しようのない明白なアリバイがあることが判明したため、その謀議自体がなかったことにされたためだった。これは、最高裁における「諏訪メモ」の出現と同じケースということになる。
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2010.10.08 Fri l 裁判 l コメント (6) トラックバック (0) l top

コメント

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2010.10.10 Sun l . l 編集
無空 様

10月10日付のコメントをいただき、ありがとうございます。今日、返信を書いてアップしようとしましたところ、無空様のコメントが「管理者のみ閲覧できます」という表示になっていることに気づいたのですが、このような処置を無空様のほうでなさいました?
というのも、私はいまだにブログの機能に疎いもので、自分では気がつかずにヘンな操作をしてしまい、コメントの反映ができないようにしてしまったのではないかと思いまして、きっとそうだと思い、そのへんを触っていましたら、コメントそのものを消してしまいました。申し訳ありません。ただ、fc2からコメント着信メールをコメント内容と共に送ってもらっていますので、書いていただいたコメントはちゃんと保存してあります。ご迷惑でなければそこからこのコメント欄に移動させていただいてよろしいですか? そのようにした上で私の返信メールを載せたいと思うのですが。実は先程一度返信コメントをアップしたのですが、これでは如何にもヘンだと思ったもので、一旦削除しました。

どうもご迷惑、お手数をおかけして申し訳ないのですが、お返事よろしくお願いします。
2010.10.11 Mon l yokoita. URL l 編集
管理者権限
横板様、無空です。
私は、管理者しか読めないようにはしていないと覆います。というのは、私も歴は長いのですが、(無空というのはネットのはじめ96年頃、「宗教のるつぼ」という2ちゃんの前身のような、宗教を論じるだけの大掲示板がありまして、そのときのハンドルネームを使っております)仕組みはさっぱりわからないのです。だからもしかすると私が何かした可能性もゼロではないと思います。
もちろんコメント欄に載せて頂ければ幸いです。何かまずいことを言ってしまったのかと思っていたところです。政治的な左右は関心がないのですが、時に過激なことを口走ってしまいますもので(笑)。その節は悪い癖が出たなとお笑いください。

2010.10.11 Mon l 無空. URL l 編集
横板様、非常に貴重な記録ですね。
松川事件というと名前だけ有名で、何か知っているような気がしていますが、実は全然わかっていないのだと言うことがよくわかりました。本当に息詰まる緊迫した記録です。我々はもっとこのような事実を知らなければなりませんね。

この中で非常に示唆的なのは

『裁判長 やっているかやってないかは神様しかわかりません。
被告 我々は知ってるんだ。
裁判長 黙らないならあなたがたに退廷してもらうより外ない。』

という部分です。
本当は何も知らない「人間」裁判官が事実を知っている(=「神」)被告を裁く。
これが裁判の本質ですね。
知らん人が、知っている人を裁き(=事実を押しつける)、そのことを指摘されると、権力を持って黙らせる。
このとき人間が「神」を黙らせようとしていることに気づいていたでしょうか。
そもそも、裁判長は「やっているかやっていないかは神様しかわからない」というその意味を実感してはいなかったと思います。
ただ単に被告らを黙らせようとして、その手段として言葉を借りてきたのでしょう。あるいは心にもない出まかせを言った。
それで黙らせることができると思ったのに、神の反撃にあった。
彼が言葉の意味を本当にわかって使ったのであれば、神の反撃に打ちのめされたはずです。
「わかりました。もう一度判決を考えましょう」という誠実さが出たはずだと思います。
それにもかかわらず、すぐさま思いつきが功を奏さず、権力を引っ張り出したところに、この裁判長の人間性(不誠実性)が丸出しになっています。

そして、この事件は最高裁で破棄差し戻し、高裁で無罪となったときに、もう一度この法廷でのやり取りの重さを見つめ直すべきでした。
「なぜ無実の者を死刑にまで追いやったのか」という点を徹底して追求すべきでした。
そして裁判は「人間が神を裁くという、本来不可能なことをしているのだ」と言うことを認識すべきでした。

しかし、今日に至るまで、そのような認識に至ってはいないのでしょう。冤罪は生じるべくして生じ、とどまるところを知りません。

最近、検察官の証拠偽造(変造)をきっかけに取り調べの可視化がクローズアップされています。これ自体は歓迎すべきことですが、これが冤罪防止に役立つかというと疑問があります。
なぜならば、取り調べを可視化しても、裁く裁判官の姿勢には何ら変化を求めていないからです。
このままでは、取り調べを可視化して供述証拠が得られなければ、検察官の出す証拠にこじつけをして犯罪を認定してしまう危険性があるでしょう。可視化を求めると同時に、裁判官の事件に対する態度も同時に変えられるべきであることを求める必要があると思います。「無罪の推定原則の徹底」の要求ですね。この原則は、「知らないものが裁く」という危険性を認識した賢者のルールでしょう。愚かな人間(我が国の司法)がこれを無視し、冤罪を製造しているのです。
2010.10.12 Tue l 無空. URL l 編集
無空 様  コメントありがとうございます。

>非常に貴重な記録ですね。

最初読んだ時、とても感銘を受けたものですから、中には同様のことを感じる人がいるのではないかと思って引用掲載しました。上のように言っていただき、アップしてホントよかったです。

松川事件は名前があまりに有名なので、何かステレオタイプの裁判進行だったのではないかと思いがちですが(私も最初そう思っていました)、被告人たちのこういう記録や趣意書、廣津和郎の「松川裁判」などを読んでみると大違いで、今でもいろいろ学べることが多いと感じています。被告たちは酷い目に遭ったわけですが、この裁判にはどこか人を元気づけてくれるものがあるんですね。世界にも類を見ないかもしれないほどのあれだけの大裁判闘争が行なわれながら(弁護人の一人は「偉大な松川の運動」と著書で何度も述べていますね)、それでも今の裁判にその重い意味、経験が生かされてないと思うと、「喉元過ぐれば熱さ忘れる」というか何というか、日本というか日本人てダメなのかなぁ、などと思ってしまいます。

>本当は何も知らない「人間」裁判官が事実を知っている(=「神」)被告を裁く。
これが裁判の本質ですね。

このようにうかがってまったくそのとおりだと思い、ハッとしました。裁判長の「神様」という言葉があんなに異様に、強烈に響いてくるのは、被告たちの無実があの場面にあまりにもハッキリ出ているからだということに思い当たります。被告側の態度の人間らしさ、立派さ、それに比べて裁判官の非人間性、ですね。

>そもそも、裁判長は「やっているかやっていないかは神様しかわからない」というその意味を実感してはいなかったと思います。

そうです。「見解の相異」という言葉にしてもそうですね。それから、鈴木信さんに「無実の罪で死刑の判決をされて、あなただったらどうしますか。」と言われると、あの裁判長は即座に「法律に従って責任をおいます。」と答えてますね。これは「たとえ無実でも、素直に死刑になります」という意味なのでしょうか? まぁ、何も考えず被告を黙らせようとして言っただけの無責任な言葉なのでしょうが、これでは、まだ一審の裁判長の方が良心的だったようです。この人は判決を読み上げる時に手がブルブル震え、話している判決内容も誰もよく聞き取れなかったそうですし、その後一時精神を病んで入院したといいます。

>最近、検察官の証拠偽造(変造)をきっかけに取り調べの可視化がクローズアップされています。これ自体は歓迎すべきことですが、これが冤罪防止に役立つかというと疑問があります。
なぜならば、取り調べを可視化しても、裁く裁判官の姿勢には何ら変化を求めていないからです。

冤罪に関しては、私も実は検察官よりも裁判官のほうに責任を感じることが多いです。廣津和郎も「裁判所さえ公正ならば、でっち上げは成立しない。裁判所が公正でないと、安心して暮らせない」という趣旨のことを何度も述べています。刑事裁判において裁判官の最大の仕事は、検察官の立証が正しいか正しくないかを正確に見抜き、適切な判断ができるかどうかですよね。検察に迎合する姿勢を自力で改めることが無理ならば、取り調べの全面可視化とともに、裁判官と検察官の交流・交際について公的に制限を設けるようなことも検討してほしいくらいです。
2010.10.12 Tue l yokoita. URL l 編集
Re: 人間が神様を裁く
> 横板様、非常に貴重な記録ですね。
> 松川事件というと名前だけ有名で、何か知っているような気がしていますが、実は全然わかっていないのだと言うことがよくわかりました。本当に息詰まる緊迫した記録です。我々はもっとこのような事実を知らなければなりませんね。
>
> この中で非常に示唆的なのは
>
> 『裁判長 やっているかやってないかは神様しかわかりません。
> 被告 我々は知ってるんだ。
> 裁判長 黙らないならあなたがたに退廷してもらうより外ない。』
>
> という部分です。
> 本当は何も知らない「人間」裁判官が事実を知っている(=「神」)被告を裁く。
> これが裁判の本質ですね。
> 知らん人が、知っている人を裁き(=事実を押しつける)、そのことを指摘されると、権力を持って黙らせる。
> このとき人間が「神」を黙らせようとしていることに気づいていたでしょうか。
> そもそも、裁判長は「やっているかやっていないかは神様しかわからない」というその意味を実感してはいなかったと思います。
> ただ単に被告らを黙らせようとして、その手段として言葉を借りてきたのでしょう。あるいは心にもない出まかせを言った。
> それで黙らせることができると思ったのに、神の反撃にあった。
> 彼が言葉の意味を本当にわかって使ったのであれば、神の反撃に打ちのめされたはずです。
> 「わかりました。もう一度判決を考えましょう」という誠実さが出たはずだと思います。
> それにもかかわらず、すぐさま思いつきが功を奏さず、権力を引っ張り出したところに、この裁判長の人間性(不誠実性)が丸出しになっています。
>
> そして、この事件は最高裁で破棄差し戻し、高裁で無罪となったときに、もう一度この法廷でのやり取りの重さを見つめ直すべきでした。
> 「なぜ無実の者を死刑にまで追いやったのか」という点を徹底して追求すべきでした。
> そして裁判は「人間が神を裁くという、本来不可能なことをしているのだ」と言うことを認識すべきでした。
>
> しかし、今日に至るまで、そのような認識に至ってはいないのでしょう。冤罪は生じるべくして生じ、とどまるところを知りません。
>
> 最近、検察官の証拠偽造(変造)をきっかけに取り調べの可視化がクローズアップされています。これ自体は歓迎すべきことですが、これが冤罪防止に役立つかというと疑問があります。
> なぜならば、取り調べを可視化しても、裁く裁判官の姿勢には何ら変化を求めていないからです。
> このままでは、取り調べを可視化して供述証拠が得られなければ、検察官の出す証拠にこじつけをして犯罪を認定してしまう危険性があるでしょう。可視化を求めると同時に、裁判官の事件に対する態度も同時に変えられるべきであることを求める必要があると思います。「無罪の推定原則の徹底」の要求ですね。この原則は、「知らないものが裁く」という危険性を認識した賢者のルールでしょう。愚かな人間(我が国の司法)がこれを無視し、冤罪を製造しているのです。
2011.05.14 Sat l yokoita. URL l 編集

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