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 岩波ブックレットに関して ①

   

金光翔さんの「岩波ブックレット『憲法を変えて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言』をめぐる一件 」を読ませていただいてからもう二週間ほど経ったことになる。このエントリーについては、ブログ「全体通信」が「「岩波労組」はその構成員を即時「解放」せよ」とのユニークなタイトルの下、鋭い指摘が数多くふくまれた文章を書かれているが、そのなかに

「…金氏が控訴審(引用者注:対『週刊新潮』および佐藤優裁判の控訴審)についての告知に先立って、会社との対立の原点でもあるという、大変興味深く、また充実した内部告発を行っている。発行当時もそのタイトルと表紙デザインについて少なからぬ批判的反響があったように記憶している岩波ブックレット『憲法を変えて戦争へ行こう という世の中にしないための18人の発言』(以下 “ブックレット”)の出版経緯が、当時の自らの経験をもとに克明に開示されているのである。」

という記述がある。「大変興味深く、また充実した内部告発」であるという見解には共感したが、このブックレットが「発行当時もそのタイトルと表紙デザインについて少なからぬ批判的反響があったように記憶している」という点について、実は、私はこれまでこのブックレットは読んだことはもちろん見たこともなく、全然知らないことであった。大々的になされたという広告のことなども今回初めて知った。ただ、金さんがエントリー中で触れているように、論文「<佐藤優現象>批判」の「注」を読んだ記憶は残っていて、「ムカツク国」という表現については、「そういえば…」と思い出された。


   

遅ればせながら、今回図書館から借りだして読んでみたのだが、読後感は茫洋として自分でもうまく捉えがたいというかかなり複雑なものであった。これは上述の金さんの文章を読んだため、どうしてもこの企画の背景について考えてしまうせいなのだろう。何をどのように書いたらいいのかあれこれ迷ってしまうのだが、二点に分けて書いてみようと思う。① 一つはこのブックレットそのものについての感想。② もう一つは、この件が、読者にもはっきり分かる岩波書店のその後の顕著な変化――とりわけ佐藤優氏への異常としか思えない重用(いわゆる「佐藤優現象」の強力な推進)――とどのような関連性があるのかという点。この二点について考えながらぼちぼち書いていきたいと思うが、まず①から。

「全体通信」による、「発行当時もそのタイトルと表紙デザインについて少なからぬ批判的反響があったように記憶している」という指摘については、私も今回初めて表紙を目にして「それはそうであったろう」という感想をもった。「憲法を変えて戦争へ行こう」という文字が「という世の中にしないための18人の発言」という、意味においてより肝心の文字よりもはるかに大きなポイントで印字され、これだけで表紙全体のほぼ三分の二を占めている。残りの下三分の一に「という世の中にしないための18人の発言」という文字と18人の著者名が配置されている構成を見ると、胸に「なぜ?」という納得のいかなさがいつまでも残る。意図が見えすいているようでちょっとあざとい印象を受けるのだ。ましてや最初のタイトルだったという『憲法を変えて戦争に行こう――18人が語る、不戦・平和・憲法9条』どおりで刊行されていたとしたら、疑問や不快感は並大抵ではなかったように思う。変更の理由は吉永小百合の強硬な反対のためだったということだが、反対してくれて岩波書店は(本自体も)救われたのではないだろうか。

吉永小百合は昔から野球好きだったようで巨人のファンとして世間によく知られていたが、「江川事件」の後スパッと巨人ファンを辞めた。そのことについて後々、久米宏の「ニュースステーション」だったと思うが、経緯を訊かれて、「(あの事件以来)どうしてもダメなんですよねぇ。」とひどく生真面目に話していたのが印象に残っている。「自分の原稿は引き上げる」と言ったというのも分かるような気がしないこともない。それに十代前半から芸能界にいてアイドルスターとして飛びぬけた存在だった吉永小百合はよく似た性質の出来事をイヤというほど見聞きしたり経験させられたりしていたのかも知れない。読者の立場からすると、エッと驚かされた、あやうく騙されそうになった、という場合、その落差や意外性に解放感をおぼえるなど心地よさを感じる場合もあるが、この場合にはほとんどの読者はそういう気持ちにはなれなかったのではないかと思う。

本文についての私の感想をいうと、全体として内容は決して悪くはないのではないかと思った。前の戦争が侵略戦争であったという視点がどの人の文章にもほぼ皆無なので深さや洞察力という点では弱点や物足りなさは感じるが、人選上(スポンサーなどからかかる圧力がつよいと思われる芸能界の人が多い)、また紙幅の関係上、書き手の人々にそうそういろんな注文をつけるのも気の毒な気がする。全体として書き手の真面目さはよく伝わってくるように思った。これはあるいは、岩波書店の『世界』誌上で佐藤優氏の世にも珍妙な、そして読者の読解力を頭からバカにし切っているとしか思えない護憲論と称する文章を読んだときの不快感の記憶があまりにも強いせいもあるのかも知れない。佐藤氏はこんなことを書いていた。(引用者注:/はすべて改行部分)

「 本連載で、筆者は具体的な政治的提言を行うことをできるだけ控えた。それは最後に一つだけどうしても強調したいことがあるからだ。その強調したいこととは、日本国憲法の擁護である。/ 憲法第9条の改正は共和制に向けた露払いとなる危険がある。憲法第9条を改正して交戦権を認めよと主張する論者がいる。その場合、宣戦の布告は誰が行うのであろうか。論理連関からすれば天皇の国事行為になるはずだ。戦争を行った場合、日本が絶対に勝つという保証はどこにもない。事実、61年前にわれわれは敗北したではないか。敗戦した場合、宣戦を布告した者の責任が追及される蓋然性は高い。ここから天皇制が外圧によって崩れる危険が生じる。天皇制が崩壊すると権威と権力を分離するという日本の伝統が崩れる。共和政体になった場合、権威と権力を一身に集めようとする煽動政治家の詐術によって日本国家がファッショ化する危険性が高まると思う。」(『民族の罠 最終回』佐藤優(『世界』2006年4月号)

日本国憲法の第4条「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」、第7条の「この憲法の定める国事に関する行為」の内容、および自衛隊法の第7条「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」との各条文を見れば、「宣戦の布告」が「論理連関からすれば天皇の国事行為になるはず」がないことは分かり切っているはずだから、この発言も詭弁としか言いようがないと思う。このような重要な問題に関する欺瞞的記述についても『世界』編集部は筆者に意味や意図を問いただそうともしていないのだからあきれてしまう。「共和政体になった場合、日本国家がファッショ化する危険性が高まる」については当時何人もの人がその矛盾を例を挙げて具体的に指摘していたと記憶する。


   

こういう意味不明の護憲論に比べれば、あのブックレットのほうが内容的にずっといいと私は思うが、さてあの本の出版当時の一般的な評価はどうだったのだろうと、アマゾンのブックレビューを覗いてみたところ、69件のレビューが寄せられていて、好意的な評価もずいぶんあった。「各界の著名人が自分の言葉で語った平和のためのメッセージ集です。読み易いブックレットであるという点も好感がもてます。」とか、「様々な世代・分野の人々が文を寄せていますが、やはり実際に戦争を体験している人の話は説得力があります。」。また、タイトルについても岩波書店の意図を好意的に解釈している心やさしい読者もいた。「書店に並んでいるのを見たら、「憲法を変えて戦争へ行こう」!という右寄り?の本ではないかと勘違いされないかと心配したのは私だけかもしれませんが、続く「~という世の中にしないための18人の発言」でほっとして、逆にこのアンバランスなタイトルに魅かれたのかもしれません。とにかく読んで見てください。読みやすくわかりやすい憲法の話です。」

しかし、「私も護憲の立場に立つものである。しかしながら、本書のタイトルに典型的に見られるような「平和国家か、戦争国家か?」といった問いかけ方が、運動論的にどこまで有効なのか少し疑問に思わざるを得ない。」「“著名人”が18人もいて「憲法が変わる」→「戦争に行く」という論理飛躍を誰も追及しない、意思統率のとれた本です。」という痛いところを衝いたと思われるきびしい評価も相当数見られた。また、「…本のタイトルは『戦争は嫌なので戦争をしないためにしなければいけないことは何かを考えたい人のための18人の発言』‥‥ということに。/いや、私はコピーライターじゃないので‥‥。」というやんわりとしたタイトル批判(?)も見られたが、「あれっ?」とタイトルがついた次の批判には、岩波書店は心して耳を傾けるべきだし、それだけにとどまらず版元としての見解をきちんと述べる責任もあるのではないだろうか?

「これって雑誌のフロクについてませんでしたか? 通信販売の。/そうと知っていてブックレットとして販売しているのなら、通信販売雑誌かった人のほうが得したことになります。 /つまり、雑誌のフロクなわけです。この商品は。みっともないことしているなあ。」
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2011.06.01 Wed l 言論・表現の自由 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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