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去る5月24日に水戸地裁土浦支部が言い渡した布川事件の桜井昌司さんと杉山卓男さんの再審無罪判決が本日(6月8日)午前0時に確定した。検察側の控訴断念によるものである。事件当時二十歳だった桜井さんと杉山さんはともに捜査段階での自白を証拠とされて無期懲役の判決を受け、96年の仮釈放まで29年もの間獄に繋がれていた。仮釈放から15年目、事件発生から数えると44年目にしてようやくの無罪確定である。布川事件の無罪確定に関する記事を読売新聞から一部引用する。

「 戦後の事件で無期懲役または死刑が確定後、再審での無罪が確定したのは昨年3月の「足利事件」に続き7件目。
 これに先立ち、水戸地検の猪俣尚人次席検事は7日夕、「新たな立証は困難で、無罪判決を覆す見込みが立たない」として控訴の断念を表明。無罪判決の確定については「厳粛に受け止めている」と述べた。
 検察側の控訴断念を受けて記者会見した桜井さんは「43年余りかかって無罪になった。支援者の皆さんのおかげ。素直にうれしい」と喜ぶ一方で、「冤罪の原因は警察、検察、裁判官にあるのに、判決は触れず、激しい怒りを感じる」とも語った。杉山さんは「これで普通の人間に戻れる。一区切りつけて休みたい」と安堵の表情を浮かべた。」(2011年6月8日00時24分 読売新聞)

無罪確定に際し、検察は、「厳粛に受け止めている」とは述べているものの、反省や呵責の念、二人への謝罪の言葉はなく、具体的な改善策についても言及していない。冤罪阻止のための方策を自ら率先して探索し、実践しなければ許されないという真摯かつ積極的な姿勢は感じられないのだ。でももうこれ以上、「一件落着」とばかりにこれで済ませてはならないことは明白だ。桜井さん、杉山さんがいみじくも口をそろえて要求されているように、「取調べの全面可視化」と「検察の手持ち証拠全面開示義務」は一日も早く法律として制定されなければならないと思う。

司法が無実の人に有罪を宣告し、監獄に閉じ込めておくということは、実質として国家が一般市民に対し「誘拐・監禁」という重犯罪をおかしているということ。29年間もの長期に亘って囚われの身となっていた桜井さん、杉山さんは、29年間、国家によって誘拐監禁されていたことになるし、捜査における自白強要は恐喝という犯罪であり、たとえ直接的な暴力がなかったとしても、これが耐え難い精神的・肉体的拷問であることに違いはない。市民としてのあらゆる権利剥奪や名誉毀損もふくめ、罪状を列挙していったら、いったいどれだけの質量の司法犯罪が立証されることになるだろうか。仮釈放後の桜井さんと杉山さんを追ったドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」の監督である井手洋子さんが雑誌『創』で桜井さんと杉山さんが体験させられた過酷な取調べについてのインタビューをされているので、そのなかから一部を引用させていただく。
http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/2011/05/4020114.html


【桜井】杉山が突き付けられたのは俺の調書だよな。俺の署名が入った自白調書を目の前で見せられて、それでもうダメだと思ったって。

【杉山】そう。それに刑事から「やったと認めれば4~5年で出てこられるが、認めなければ死刑になる」と言われました。「認めなければいつまでも調べる」というのも、非常に堪えましたね。このままずーっと取り調べが続くのか、と。

◆やってない自白調書がどうやって作られるのか◆

【桜井】「やってないなら言えない」という認識が、そもそも間違ってるんですよ。いったん「やった」と言わされてしまえば、その後は誰でも言えてしまうものなんです。事実は捜査官が知っているわけですから。捜査官の納得する答えが出るまで、何度でも質問が繰り返される。イエス・ノーで答えさせられ、答えが合えばそれをノートに書いていく。そして最後に、捜査官がスラスラとまとめるのが自白調書です。誰でも言えるものなんだということが、なかなかわかってもらえないんですよね。
 逮捕されて留置場に入れられて、外の世界と断絶されたところで取り調べを受けるというのは、やはり異質というか、想像を超えたものがあるんですよ。

【杉山】私は「現場の図面を書け」と言われたんです。やってないから書けるわけがない。そうしたら「まずは鉛筆で書け」という。ボールペンで書くと間違えたら消せないから、と。それでも書けないでボーっとしてたら、「普通の家はどういう形をしている?」と訊くんです。丸や三角の家は田舎にはないなと思って「四角だ」と答えたら、「じゃあ四角を書け」と。四角を書いたら「家の中には何がある?」と訊かれる。たいてい箪笥はあるだろうと思って「箪笥」と答えると、「そうだ、箪笥だ」「で、箪笥はどこにある?」と。家の真ん中に箪笥があるわけないと思って端のほうを指差したら「そうだ、そこに箪笥を書け」と言われ、「もうこれ以上は書けません」と言ったら、刑事が引き出しから現場の図面を出して、自分が見るふりをしながら、私にも見えるようにしてくる。そうすると私はそれを見て死体があった場所などを書くことができた。それが取り調べなんですよ。」

二人の犯罪の証拠とされたものは、自白であった。やってもいないことをなぜ自白できるのだろう、とはたいていの人が一応は考えることだろうが、上述の桜井さん、杉山さんが語っているように、そのような環境下に孤立して置かれた場合、人はやってもいないことでもやったと嘘の自白をするほうがむしろ普通だと考えたほうがいいかも知れない。戦前の冤罪事件として名高い帝人事件では大蔵省の役員など18名が逮捕起訴されているが、そのうち最後まで否認し通したのはたった4名に過ぎなかった。また戦後の松川事件では20名の被告人のうち8名が実に詳細な自白調書をとられている。両事件とも、被告人たちは後の八海事件のように肉体に激しい暴力を振るわれたわけではなく、人としての誇りをズタズタに引き裂くような言葉の暴力、長時間の取調べによる睡眠不足や疲労困憊、人間の弱みにつけこんだ脅したりすかしたりの取り扱いなど、まさしく精神的拷問というべき残酷な取調べだったようである。

布川事件の証拠には自白以外にもう一つ通行人の目撃証言というものがあった。しかし、その証言者は公判に入って二人が自白を翻した後に突如現れた人物だったそうである。これは傍目にもいい加減な証言であることがあまりにも明白だったため、二人は一審の法廷審理において自分たちの無実は確実に証明されたと信じ、有罪判決が出るとは夢にも思っていなかったそうである。

「【桜井】何の物証もないし、証言だってすぐに嘘だとわかるようなものでしたからね。だって目撃証言だっていい加減なもので、50㏄のバイクで道を走っていて、100メートル以上も離れたところから二人の顔が見えたなんて言っているけど、見えっこない。このあやふやな証言以外、何の証拠もないわけですから、有罪になるわけがないと思っていました。判決を法廷で聞いているときはぼう然として、心臓がまるで耳元についているかのように「ドックン、ドックン」と脈打つのが聞こえました。」

再審公判で初めて明らかになったことだが、殺害された被害者男性の家の前で見た人物は杉山さんではなかったという近所の女性の証言を捜査当局はそれまでひた隠しにしていたのだ。この目撃証言が初めから法廷に出されていれば、おそらく二人の有罪はありえなかっただろう。それより以前に検察は二人を起訴することはできなかっただろう。これこそが問題の本質ではないだろうか。公正な裁判のためには取調べの全面可視化とともに、捜査側の手持ち証拠全面開示義務が法として必要不可欠であることをこの証拠隠匿は物語っていると思われる。松川裁判でも布川事件と同様の重大な証拠隠しが行なわれていた。松川労組と東芝労組が列車転覆のための謀議をしていたという時刻に、その謀議出席者の中心人物の一人であるとして死刑を宣告された東芝労組の佐藤一被告は実は会社にいて会社側と労働争議について団交をし、そこで多くの発言をしていたことが諏訪氏(会社側)のノートに記されていたのだが、そのノートを検察は押収したまま隠し続けていたのだった。松川事件が最高裁で差戻し判決を得ることができた決め手は、このいわゆる「諏訪メモ」の存在が明らかになったことである。この点、布川事件の経緯とそっくりである。時代は変わっても捜査側の手法はまったく変わっていないのであった。松川裁判の教訓は生かされていなかった。

この場合の捜査陣営の本心を推し量ると、「やつらが犯人であることは間違いないのだから、やつらに有利な証拠を隠したからといって、責められるいわれはない。結果的に事件が解決すればそれでいいではないか。」というようなところではないかという気がする。延々と同じことが繰り返されるのは、取調べる相手を犯人だと固く思い込む、または決めつけてしまう、そのような心理のせいではないだろうか。しかし、それは、自分を正当化するのに都合のいい弁解を捏造しているだけの、自分勝手な居直りに過ぎない。その実態はきびしく処罰される必要のある犯罪であるだろう。

5月18日には、江田五月法相が録音・録画の法制化を含む刑事司法制度の見直しを法制審議会に諮問しているが、審議会には録音・録画の法制化とともに証拠全面開示義務の法制化をもぜひともお願いしたい。


最後に、桜井昌司さん、杉山卓男さん、長い間、本当にお疲れ様でございました。お二人のこれまでのご奮闘に心からの敬意を表し、今後のご健康とご活躍をお祈り申しあげます。
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2011.06.08 Wed l 裁判 l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

朝日の記事、ご教示感謝します。
2011.06.09 Thu l ひろもと. URL l 編集

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