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「首都圏労働組合特設ブログ」で金光翔さんの「岩波書店、「解雇せざるをえない」通知の継続を宣言(5月24日 対岩波書店団交記録)」を読んで、岩波書店が相変わらず道理の通らない不合理な主張をしていることを知った。その主張・行動は不合理であるとともに冷酷でもあり、せこくみみっちいものでもあるように思う。岩波書店の刊行物は雑誌『世界』をふくめてかねてより自分たちが現在行なっているこのような言動をこそ批判してきたのではなかったのだろうか。ともかく日本を代表する良心的出版社と自認している「大岩波」の実態がこのような有り様かと思うと、怒りとともにやりきれなさ、情けなさの感情が込み上げてくるのを抑えられなかった。

首都圏労働組合が、5月24日にようやく開かれた団体交渉の場で、岩波書店に対し、金さんに送られてきた4月1日付文書の「会社は岩波書店労働組合との間で締結している「労働協約書」に基づいて貴殿を解雇せざるを得ない」という主張を撤回するよう要求したところ、岩波書店は、「応じられない」と答えたそうである。その理由は、金さんに「解雇」通知を発送した後、「4月11日までにB(注・原文では実名)らによる組合員名義の抗議文を受け取った」り、「何度かやり取りする中で、組合員が確かに複数存在するらしいことが確認できたため、首都圏労組を労組法上の労働組合であると判断し」たが、「4月1日時点では首都圏労働組合が労働組合法上の労働組合であることが確認できなかったので、その時点で「解雇」通知を出したことは、首都圏労組が主張する不当労働行為には当たらない。」から、撤回する必要はないとのことだったそうである。

岩波書店は上記のように、「4月1日時点では首都圏労働組合が労働組合法上の労働組合であることが確認できなかった」と述べているが、本当にそうなのだろうか?「確認できなかった」のではなく、「確認する気がなかった」「確認したくなかった」というのが岩波書店の本心ではないのだろうか。

2008年12月「首都圏労働組合特設ブログ」に掲載された「岩波書店代表取締役社長・山口昭男氏と佐藤優」というタイトルの記事によると、金光翔さんに対して会社は「首都圏労働組合に実体があると判断する、規約などの材料を自分たちは持ち合わせていない」と言ったそうである。そこで金さんが、では規約を渡せばいいのかと聞くと、会社は「それはあくまで検討材料の一つだ」と述べたそうである。これに対して金さんは「組合に実体があると認める客観的な基準を示さず、実体があるかを判断する主体はあくまでも会社側、という論理なのだ。労使対等という、労働法の基本原則から乖離していることは言うまでもない。こんな論理ならばいくらでも「実体があると判断する」ことを先延ばしできるから、実際には、会社が、首都圏労働組合が労働委員会による資格審査に通って、法人として不当労働行為の救済申立ができるようになるまで、「実体があると見なさない」ということだろう。」と批判すると同時に、「岩波書店は首都圏労働組合とのやりとりにおいて、「委員長」「住所」は認識しているはずである。」とも述べている。

金さんの指摘のように岩波書店が首都圏労働組合の「委員長」と「住所」を認識しているというのが事実ならば、この時点(2008年)で組合員が複数存在することを会社は承知していたわけである。その上、金さんは「規約を渡せばいいのですか」と訊いているが、この時岩波書店が「それはあくまで検討材料の一つだ」などとまったく消極的な返答をしたのはどういうわけだろうか。ここで誠実な応答の形として岩波書店に求められていたのは、「実体があると認める客観的な基準を示」すことだったはずである。

この「岩波書店代表取締役社長・山口昭男氏と佐藤優」という記事は、佐藤優氏が、これはおそらく首都圏労働組合を当てこすってのことだろう、雑誌である労働組合を「ユウレイ組合」と書いたことへの反論文だったと思うが、ここで金さんは憲法28条や菅野和夫『労働法 第八版』弘文堂、2008年)やその他の資料を提示して、岩波書店や佐藤優氏の首都圏労働組合に対する「ユウレイ組合」視が如何に大きな誤りであるかを説得的に述べていた。私も今回少しウェブ上で労働組合について調べてみたが、金さんの記述の正しさを保証する文章はいくらでも存在するようである。たとえば、下記の「★組合作り相談サイト(NU東京)」の「労働組合の作り方」の記事。

「最近、労働組合結成にあたって「労働組合は法人にする必要があるのか?」とか「労働委員会の資格審査を受ける必要があるのか?」という相談を受けることがありますが、労働組合を結成することと、法人化すること、労働委員会の資格審査を受けることは全く別の次元の事柄です。とくに「法人化」は労働組合の結成とはなんら関係がありません。労働委員会による資格審査は、労働組合活動の中で必要に応じて受ければよいのです(このときのポイントは、運営について経営者から自立していること、運営が民主的であるということ、労働組合法第五条に示された規約を持っているということです)。一番大事なことは、労働者が労働者間の差別を認めずに経営者から自立して集まり(団結して)、自分達の経営に対する要求をまとめ、交渉を申し入れるということです。」

また、Wikipediaにおける労働組合の作り方についての記述も上の場合とほぼ同様の内容である。

「日本の場合、複数の労働者が組合結成に合意することにより労働組合を結成できる。結成についていかなる届け出も認証も許可も必要ではない。ただし、法人登記を行うためには、地域の労働委員会に規約その他必要書類を提出し、労働組合法上の規定を満たしている証明を得る必要がある。」

これらの文章を読むと、労働組合の結成は、法人化や労働委員会の資格審査を受けることなどとはまったく別の次元の事柄のようである。要は、二人以上の労働者が経営者から自立して集まり、労働環境や労働条件の維持・改善のために、経営側と交渉を行なうことこそが労働組合の存在意義であり、また労働組合運動として決定的に大事だという点については、労働組合というものについて述べるどの論者の意見も見事に一致しているようである。またこれらは金さんが実際に会社を相手に実践していることそのもののように思われるが、これとは反対に、岩波書店の言い分を肯定的に補足してくれる文章は見当たらないようである。少なくとも私は見つけることはできなかった。組合結成にあたっては、複数(二人以上)の労働者が結集することや規約をもっていることの必要性は述べられていても、労働組合は組合員名簿を経営者に見せて許可を得る義務などないのである。首都圏労働組合の規約は首都圏労働組合特設ブログにもう一年以上も前から掲載されているので、岩波書店は知らないはずはないと思われる。

ところが岩波書店は、4月1日付で「首都圏労働組合」は存在しないものとして(そのように決めつけているのでなければ解雇通知は送れないだろう)、また岩波書店労働組合は金さんを除名するに際して(金さんはすでに5年も前に脱退届を提出しているというのに岩波労組は「脱退届受理」とするのではなく、あえて「除名」にしている)、どういう理由かは分からないが会社に対して金さんの「解雇は求めない」と述べている。しかし、会社、すなわち岩波書店はそれを無視して金さんに「岩波労組の除名により、解雇せざるを得ない」という通知を送りつけている。このような遣り方を見ると、第三者としては労使ともに本当に変わっているな、行動が奇矯だなと思うが、勤務先の会社からいきなりこういう解雇通告文書を自宅に送りつけられた金さんの方はたまったものではないだろう。しかもこの時、金さんは会社を休業中だった、それも3月から育児休業を取得していた最中での「解雇せざるをえない」通知だったという。(強調は引用者による。)


    

さて、5月24日の団交の場で、「解雇せざるをえない」通知を撤回するようにという首都圏労働組合の要求に対し、岩波書店が「4月1日時点では首都圏労働組合が労働組合法上の労働組合であることが確認できなかった」と言う理由をつけて「応じられない」と答えたことは、最初に述べた。

しかし、百歩譲って、4月1日時点では「確認できなかった」という岩波書店の言い分を認めたとしても、4月11日以降、首都圏労働組合の他の組合員からの抗議文を受け取ったり、何度かやり取りする中で、首都圏労働組合には組合員が確かに複数存在するらしいことが確認できたと岩波書店は自ら述べているのだから、「確認できた」というその時点で、「解雇せざるをえない」通知を撤回する通知を謝罪とともに大急ぎで送付するのが良識的な対応であろう。「解雇」ということは、その人の生活の糧を一方的に奪うこと、人生を大きく狂わせることである。まして、金さんは育児休業中だったというのだから、なおさらそうであろう。

むしろ私は、岩波書店は金さんが育児休業中であることをこれ幸いと利用して「解雇せざるをえない」通知を送ったのではないかという疑いさえもつのだが、どちらにせよ岩波書店のこの行為はどこから見ても卑劣に過ぎるのではないだろうか。東日本大震災とそれに伴う原発事故のために嘗めさせられている被災地の人々の筆舌に尽くしがたい苦しみとは比較はできないとしても、関東近辺にも原発事故による悩みや苦しみを現実に味わっている人々が数多くいる。そのなかで小さな子どもをかかえた親たちの心配・不安も大変なものだろう。乳幼児をもつ親はなおさらであろう。水や食料(特に母乳の場合)から放射性物質を摂取することによる危険性は子どもが幼ければ幼いほど大きいというのは周知のことだが、金さんは育児休業の延長を申請したそうである。理由について記事には「諸事情のため」としか書かれていなかったが、もしかすると原発事故の子どもにあたえる影響に対する懸念も理由の一つではないのかとも思う。そのようなことは誰でもふと想像することだろうと思うが、岩波書店の人々は違うようである。しかし一方、岩波書店役員は、大震災および原発事故に関連して、「「岩波原理主義者」たちとの闘い――「解雇せざるをえない」との通知について」によると、下記のように述べているようだ。

「来期は……岩波書店として社会的発信を強めていくことを方針としていきたいと考えています。いかなる状況であろうとも岩波書店ここにありという存在感を未来へつなぐ、持続可能な経営のために役員全員でとりくんでいきたい。」(「2011春闘団交ニュース」3月16日付より)

「岩波書店では早くから原発批判を続けてきました。1970年代から都留先生などを中心にやってきましたが、そういった中で言っていた最悪の事態を超えた事態がいま進行している。悪夢といってもよい事態です。我々の力が足りなかったのではと、怒りとともに忸怩たる思いを禁じ得ません。岩波茂雄が敗戦のときに感じたのとまさに同じような気持ちです。今、社会にむけて発信しなくて何のための編集者、何のための出版社、何のための岩波書店かと思います。人々を励まし、前を向いてもらえるようなことを考えなくてはならない。今がまさにその時。皆が一丸となってがんばりたい、がんばっていこう」(同上)

上の発言の他に、組合員の発言として「人々を励まし、前を向いてもらえるようなことを考えなくてはならない。今がまさにその時。」という言葉も同記事には引用されているが、震災や原発に関連して「人々を励ます」ことができるためには、まずその原発の影響についてあれこれ考えざるをえないのではないか、苦に病んでいるのではないかと想像される育児休業中の身近の人物のことに配慮がおよぶことであろう。育児休業中の人物に対し、客観的に見れば何ら正当な理由もないのに、「除名」「解雇通告」などできる人々がどうして他の苦しんでいる人々を励ますことができるのだろうか。
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2011.07.12 Tue l 言論・表現の自由 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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