QLOOKアクセス解析
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top
前回につづき、大阪府の「教育基本条例案」について検討するつもりなのだが、その前に、日本経済新聞(12月13日)に載っていた「橋下氏、大阪市の公募区長「ダメだったらクビに」 市長に罷免権与える制度目指す」という記事に触れておきたい。「19日に大阪市長に就任する橋下徹氏は13日、市内24区で導い入する区長公募で、実績を上げられない区長については、市長が任期途中で罷免できる制度設計を目指していることを明らかにした。」「区長は2012年4月に就任予定。任期は4年。橋下氏は「区長には市長と並ぶくらいの権限や責任を与えるが、ダメだったらクビになる。これができれば公務員制度は変わる」」と発言したとのことである。

橋下徹という人物は、ここでも「ダメだったらクビ」と述べているように、自ら何かの行動を起こすたびごとに必ず、「~したらクビ」「~しなかったらクビ」と特定の対象に対する懲戒解雇をいとも簡単に、声高に主張する。 教育基本条例案と職員基本条例案の二つがまさにそうであるが、ある個人に対してその生計の糧を奪う重大処分である「クビ」宣告を行なう権限を、別の個人はたとえそれが首相であろうと持っていない。 実際、歴代の首相が特定の誰かにクビ、解雇と公的に主張したことなどなかったはずである。橋下氏は区長公募に際して任期途中の区長罷免制度を設けるのなら、その場合は当然任命責任も問われるべきであろう。橋下氏のように憲法の指し示す精神などは頭から考慮の外、自分の支配欲を満足させるための歪つな制度作りに腐心し、府職員など他人の馘首についてはまったく心痛めるふうもなく平気の平左、そのくせ自分の失敗の責任については寸毫も負うつもりのない得手勝手な首長では救いようがない。もっとも責任ということについていくらかでも解っている、あるいはよく考えている人間なら他人にクビ、クビ、と軽率に口ばしったりしないだろう。だいたい、上の場合の「ダメ」の基準は何なのか。それを決める以前に「クビ」を決めるのは本末転倒、これでは「初めにクビ(の脅し)ありき」であろう。このような手法で何をやろうと事態の悪化は必然、良くなることは決してないだろう。

それでは、「大阪府教育基本条例案 (平成23年10月5日・大阪府議会提出版)」について、感じたこと、気になったことなどを述べていきたいのだが、条文の何れをとっても重大な問題含みであることが明白なこの条例案のなかでも最も注目すべきは、何といっても「第2章 各教育関係者の役割分担」 だと思われるので、この内容から検討したい。

「(基本指針)
第5条 府における教育行政は、教育委員会の独立性という名目のもと、政治が教育行政から過度に遠ざけられることのないよう、選挙を通じて民意を代表する議会及び知事と、 府教育委員会及び同委員会の管理下におかれる学校組織 (学校の教職員を含む)が、地方教育行政法第25条に基づき、適切に役割分担を果たさなければならない。」

条例案は、上記のように「政治が教育行政から過度に遠ざけられることのないよう…」という文句を記している。「過度に」という語句を用いているところをみると、政治は基本的には教育行政から遠いものであるべきこと、また政治が「教育委員会の独立性」を侵害して教育に介入することは「教育基本法」「地方教育行政法」によって厳に戒められていることを大阪維新の会はきちんと認識しているようである。一方、条例案は、 議会・知事・教育委員会・教職員を含む学校組織の四者はおのおの「地方教育行政法第25条に基づき、適切に役割分担を果たさなければならない」とも主張している。そこで「地方教育行政法第25条」は誰にどのような役割分担を定めているのかを以下で見てみたい。

「(事務処理の法令準拠)
第25条 教育委員会及び地方公共団体の長は、それぞれ前3条の事務を管理し、及び執行するに当たつては、法令、条例、地方公共団体の規則並びに地方公共団体の機関の定める規則及び規程に基づかなければならない。 」

役割分担を定めているのは、上記の25条ではなく、その「前3条」のようである。では「前3条」を以下に引用する。

「(教育委員会の職務権限)
第23条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。
 1 .教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。
 2.学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。
 3.教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。
 4.学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。
 5.学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。
 6.教科書その他の教材の取扱いに関すること。
 7.校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。
 8.校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。
 9.校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。
 10.学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。
 11.学校給食に関すること。
 12.青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。
 13.スポーツに関すること。
 14.文化財の保護に関すること。
 15.ユネスコ活動に関すること。
 16.教育に関する法人に関すること。
 17.教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること。
 18.所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。
 19.前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。

(長の職務権限)
第24条 地方公共団体の長は、次の各号に掲げる教育に関する事務を管理し、及び執行する。
 1.大学に関すること。
 2.私立学校に関すること。
 3.教育財産を取得し、及び処分すること。
 4.教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を結ぶこと。
 5.前号に掲げるもののほか、教育委員会の所掌に係る事項に関する予算を執行すること。

(職務権限の特例)
第24条の2 前2条の規定にかかわらず、地方公共団体は、前条各号に掲げるもののほか、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又はすべてを管理し、及び執行することとすることができる。
 1.スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
 2.文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。
2 地方公共団体の議会は、前項の条例の制定又は改廃の議決をする前に、当該地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。 」

以上、地方教育行政法の各条文を読んでいけば解ることだが、この法律は教育委員会に対し公立学校(小・中・高)の組織編制から学校の設置・管理・廃止、教育委員会・学校・その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関することなど、実に幅広い職務権限を認め、あたえている。それに比較して、「地方公共団体の長」の権限は一目瞭然、関与できる範囲も内容もきわめてせまく限定されている。第24条が規定している長の職務権限は、大学、私立学校に関すること、教育財産の取得と処分、教育委員会の所掌に係る事項に関することの契約締結、教育委員会の所掌に係る事項に関する予算を執行すること、の5項目である。 第24条の2は、スポーツと文化に関する長の権限を規定しているが、このうちのスポーツに関する規定では、「(学校における体育に関することを除く) 」というただし書きが付されている。法律は、「地方公共団体の長」の学校教育に対する具体的・直接的な関与をまったく予定していないし、認めてもいないのだ。地方教育行政法が定めている「地方公共団体の長」の職務権限のうち、学校教育に重大な作用・影響をあたえるのは、また長自身の教育に対する思慮や情熱や世界観などが如実に現れるのは、もちろん24条5項の予算の執行のあり様においてだろう。

橋下府知事が教育行政にどのような予算の執行・配分をしてきたのかは、大阪教職員組合(大教組)の教育文化部長・田中康寛氏の証言を基にこちらに書いた。吉田氏の証言どおり、橋下府知事が教育予算を削って削って、また削り、の連続であったことは、他のいろいろなブログをみても間違いないことのようである。たとえば、こちらのブログ記事。

▼教育関連費を大幅削減
●1年期限の「定数内」講師を急増。 07年4206人(9・2%)→10年5780人(12・ 3%)
●私学経常費助成を大幅削減。 11年度は小学校50%、中学校35%と削減幅を拡大。高校は 昨年同様10%を削減。小学校への1人当たりの助成額は、府は11万5千円 で全国最低レベル(国標準30万円)に
●学校警備員補助を廃止。09年度は交付金化(5億円)→11年度からゼロに。橋下知事 「子どもの安全は府の仕事ではない。学校設置者の市町村の仕事」(10年9月議会答弁)。府の補助廃止に伴い2011年度は9市町村が廃止
●さらなる府立高校統廃合を計画。「3年続けて定員割れの学校は廃校」(教育基本条例案)

●府立高校教務事務補助員等を雇い止め。年収約120万円の非正規労働者348人を、08年度末までで雇い止め(4億4千万円)
●センチュリー交響楽団補助金を廃止。07年度4億1864万円→09年度1億1千万円→11年度廃止
●国際児童文学館(吹田市)を閉館  」

上記7項目のうち、下段の3項目は教育予算には入らないのかも知れないが、広義の意味では大いに教育に関係するだろう。理科の実験の準備などで補助員の存在は欠かせない、これでは教師はますます激務に追われることになり、そのしわ寄せは結局生徒に行く、というある先生の嘆きを読んだことがある。また、小学生のなかにも特別に音楽が好きな子、本を読むのが好きな子がいる。その傾向を楽団や児童文学館はよりいっそう深め、伸ばしてやることができるだろう。また多くの子どもが音楽や読書の楽しみを知る契機になることも多かっただろうに…。

それから橋下府知事は就任した一年目から障害児の教育予算もバッサリ20パーセント削減したそうである。障害児児童が減少しているというならまだしも大阪では1999年以後の10年間で 6000人も増加しているそうである。 大阪府立障害児学校教職員組合(府障教)の福田徹委員長によると、「大阪の(一般の小・中学校にある)障害児学級の在籍数は、08年度1万2760人で、前年度比1242人増と、99年度と比べ、この10年間で6000人も増えるなど、増加の一途を辿っています。その学級で働く看護師も非正規雇用で、時給は1000円前後と、まさに官製ワーキングプアです。支援学校の在籍数も6090人で、前年度比226人増。多目的室や作業室、理科室、図工室、教具室などを普通教室に転用したり、中には、テラスを間仕切りして教室に使っているところもあります。」という。このような状態であるにもかかわらず、いくら請願しても府は支援学校を増設しようとしない。前回、 修学旅行の引率教師の食事代が削られて自費になったことを書いたが、これは障害児学級の宿泊学習の場合も同様だという。

「予算削減と付き添い教員の食事代が自費になったため、できるだけ安いところにすべく行き先を変更したり、あるいは中止した学校もある。出張旅費も削られたため、生徒の就労のための企業訪問も一日で何カ所も回らなければならず、「一日のうちに家庭訪問に行って、企業訪問にも行って、学校に帰ってきなさい」という状況になっているという。 また、生徒は電動車イスなので、バスもリフト付きバスになって、その分、バス代の上乗せとなり、旅費予算を圧迫するという。 宿泊する場合、食事も普通食ではなく、刻んだり、アレルギー除去食などにしてもらえるのは一部のホテルに限られるため、当然、割高になって足が出るので、これもまた、宿泊費の上乗せになるという。学校管理費は、平均して200万~400万円の削減。このため、水道光熱費も10パーセント削減。バスのガソリン代も削らなければならず、これからなにが起こるかわからないという。
 プールも、9月までやっていたが今年はやめたとか、水を入れ替えるオーバーフローの回数を減らしたり、夏はクーラーも子どもが帰った後は切るようにするなど、職場環境も悪化しているという。これまで節約して捻出したお金でつくっていた、子どもに合わせた教材も、今後はつくれなくなってくるという。 水が大好きな子どもは、水を流しながら遊ぶことが多いが、それもできなくなる。これまでにも、学校の修繕費やコピー代、大型ごみの処理回数を減らしてきた支援学校では、「こんだけやってるのに、これ以上、どないして減らすんや!」と怒りの声が上がっているという。」(一ノ宮美成+グループk21著「橋下「大阪改革」の正体」講談社2008年12月)

このようにしてまで教育予算を削った分がどこに行ったのかは明確でないようなのだが、ぜひ詳細を知りたいものである。橋下府政の3年半で府の負債は4000億円程増えたそうだが、これは財界の要請による、しかも無駄な公共事業などに使われているという声もあるのだ。

いずれにせよ、橋下氏の教育行政に対する向き合い方や行動には、健全な良識も知性も情熱もまた子どもに対する大人としての最低限の包容力も感じられない。橋下氏はこれほど大幅な教育予算の削減を行なって学校関係者を苦しめておきながら、なお、「教育基本条例案」に見るごとく、教員の相対評価を強行しようとしたり、懲戒免職の言辞で脅したり、ついには、高等学校・支援学校の教育目標を定めるのは知事であること、教育委員会と学校長はその目標を実現するための具体的施策を講じなければならないとまで言い出している。条例案の該当箇所を下記に引用する。

「(知事)
第6条 知事は、府教育委員を任命する権限のみならず、地方教育行政法の定める範囲において、府内の学校における教育環境を整備する一般的権限を有する。
2 知事は、府教育委員会との協議を経て、高等学校教育において府立高等学校及び府立特別支援学校が実現すべき目標を設定する。

(府教育委員会)
第7条 府教育委員会は、前条第2項において知事が設定した目標を実現するため、具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成し、校長に提示する。
2 府教育委員会は、常に情報公開に努めるものとし、府内の小中学校における学力調査テストの結果について、市町村別及び学校別の結果をホームページ等で公開するととも に、府独自の学力テストを実施し、市町村別及び学校別の結果をホームページ等で公開しなければならない。

(校長及び副校長)
第8条 校長は、前条第1項の提示した指針をもとに、学校の具体的・定量的な目標を設定したうえ、当該目標の実現に向けて、幅広い裁量を持って学校運営を行う。
2 校長は、学校運営を行うに当たり、具体的計画を提示して、府教育委員会に当該計画を実行するための予算を要求することができる。
(略) 」

問題の第6章2項の「知事は、府教育委員会との協議を経て、高等学校教育において府立高等学校及び府立特別支援学校が実現すべき目標を設定する。」という文言だが、この3年半、橋下知事は予算の大幅削減など教育界に対して世にも無慈悲な施策をしておきながら、今度は府立高等学校及び府立特別支援学校が実現すべき目標を自らが設定する、と主張しているわけである。どうも悪い冗談としか思えないが、橋下氏とその周辺は本気なのだからとことん恥を忘れた人たちの集まりなのだろう。そもそも「実現すべき目標」の内容については何の説明もない。その時々の知事の考え方一つに委ねられるということだろうか。こんな戯れ言のようなものを実現すべき目標として押し付けられる学校・生徒はたまったものではないだろう。この条文には強烈な支配欲とともに思考の稚拙さ・粗雑さとがいり混じっていて、そのせいか私には狂気じみたものに感じられる。

新聞報道によると、文部科学省は「知事が教育目標を設定する」と定めた維新の会提出の教育基本条例案について、地方教育行政法に基づき「職務権限に属さない目標の設定について知事が規則制定できない」と指摘。また、教育委員が首長の定める目標を実現する責務を果たさない場合についても 「罷免事由とすることはできない」と、条例案に否定 的な姿勢を打ち出したそうであるが、これが普通一般の見解・態度だろう。この条例案の全体をつらぬく異様さを文部科学省もさすがに放置できなかったのだろうか。
関連記事
スポンサーサイト
2011.12.15 Thu l 橋下徹 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

来年もよろしく
今年は横板さんのブログに出会えてよかったです。
政治家やマスコミからの情報だけでなく,
横板さんのような鋭い分析を
ブログで,また展開してください。
橋下さんも,政府もつっぱしりますね。
国民が監視していかないといけないですね。

では,2012年が横板さんにとって,
世界の人々にとってよい年でありますように。
2011.12.27 Tue l 林. URL l 編集
林様
コメントをありがとうございます。
前回はどういうお返事をしたらいいだろうと考えているうちについつい日が過ぎてしまいました。申しわけないです。あまり更新頻度の高くないブログですが、来年も気が向いた時に覗いてみていただければ幸いです。林さんもどうぞ良いお年を!
2011.12.28 Wed l yokoita. URL l 編集

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://yokoita.blog58.fc2.com/tb.php/183-400d2089
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。