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 岩波書店の社員募集の問題点と金光翔さんの考察

2月2日、岩波書店のホームページに2013年度の定期採用の要項が掲載され、その応募資格の項目に「 ※岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること 」と明記されていたことが波紋を呼んでいる。多くの人は当然のことながらこの募集要項を見て、岩波書店が今年は自社の著者および社員のコネ、縁故がある者のなかから社員を採用すると宣言したものと受けとめて話題にしたり、是非を論評したりしたわけだが、岩波書店はこの騒ぎに珍しく(?)素早い反応を示し、こちらの取材によると「 岩波書店「縁故採用ではない」と主張、意欲ある学生求める」と下記のように述べたとのことである。

「 岩波書店総務部の採用担当者は、オルタナの取材に対して「今回このような制度を取り入れたのは、数人のわずかな採用人数に対して毎年1000人近い学生が応募をしてくる。採用にかけるコスト削減ではなく、単純に興味本位だけで受けにくる学生の数を減らし、意欲のある学生に出会いたいとの意図からこの制度を取った」と答えた。/企業が雇用する際に、その企業と何らかの関わりがあることを採用の条件とする縁故採用と騒がれている件については「紹介文はあくまで応募条件であり、採用条件とは別のものである。例年通り筆記試験や面接の上、採用を判断するので、紹介文の中身はその後の採用試験の合否に影響しない」と、縁故採用ではないと強く主張した。/しかし、課題もある。岩波書店はOB/OG訪問を受け入れていない。岩波書店とのつてがない学生には厳しい対応だ。」( オルタナ 2月3日20時50分)(/は改行箇所)

岩波書店は「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」という応募条件を設けた理由につき、上記のように「採用にかけるコスト削減ではなく、単純に興味本位だけで受けにくる学生の数を減らし、意欲のある学生に出会いたいとの意図からこの制度を取った」と述べているが、その前日の別の取材では、その理由を「出版不況もあり、採用にかける時間や費用を削減するため」(共同通信2月2日 18時19分) としている。上の2つの報道が岩波書店の発言を正確に反映しているとの前提に立てば、今回の募集方法の意図について岩波書店は2月2日には「コスト削減のため」と言い、翌日の3日にはそれを「コスト削減ではなく」と明確に否定し、「意欲のある学生に出会いたいとの意図からこの制度を取った」と述べている。自分たちの意図についての外部への説明がたった一日でまるっきり変わってしまっている。

「意欲のある学生に出会いたい」という岩波書店の説明についても疑問がある。岩波書店の著者や社員に知人はいないが、何とかそういう人を探しだして紹介状をもらおうと努力することは確かに「意欲」を要するだろうが、ただこの「意欲」は志の高さや編集業務との適性などとはあまり関係はなさそうだ。採用試験は結果がどうなろうと自分の力量だけで勝負したい、そうすべきだという考えの持ち主のほうに精神的自立心や健全さが感じられると思うし、またそれが普通の良識ある考え方ではないだろうか。岩波書店が応募希望者に要求している条件は対象にとってあまりに負担の大きい無茶なことのように思う。岩波書店は、この度の募集方法について「応募条件であり、採用条件ではない」との発言もしているようだが、著者および社員の紹介がなければそもそも受験できないのであれば、採用されるのは必然的に紹介状をもらうことができた人にかぎられるのだから、岩波書店のこの言い分もまたヘンではないだろうか。第一、「岩波書店の著者」と聞いて、その意味するものを正確に理解できる人など世の中に何人いるだろうか。

この問題について、小宮山洋子厚生労働相は3日、閣議後の記者会見で「こうした募集方法は聞いたことがない」 「早急に事実関係を把握したい」と述べ、調査に乗り出す考えを明らかにしたそうだが、この発言には、良い意味でちょっと驚いた。電通やテレビ局などはコネ入社の社員で一杯、などという話をよく聞くのでこういう話題には厚労相といえども当たらず障らずの対応をするのではないかという先入観があったのだ。女性差別のなかでも就職問題では特に差別され、苦境に立たされることの多い女性だが、その女性大臣ならではの敏感な反応だったのかも知れない。

それにしても、問題なのは、岩波書店が労働問題に関してどのような本を出版しているか、自社のその出版物と岩波書店役員・社員の現実の行動が、まるで逆走を意図しているのかと思うほどに、いかに遠く隔たっているかということである。そのことを考えれば、他所もやっているから、などと見過ごすことは今後の社会にあたえる悪影響という側面からもよくないだろう。じつは私もこういう条件のついた社員募集広告を見たのは小宮山氏同様今回が初めてだった。

ところが、サイト「首都圏労働組合」で、今回の問題を取り上げた金光翔さんの「 メディア報道における岩波書店の弁明への疑問と批判 」という記事を読むと、問題の根は今私たちが知っているよりもっと奥深いところにある、むしろこの件は世間が認識していることとは全然別のストーリーを持った出来事のようなのである。具体的な詳細についてはぜひ金さんの記事を読んでいただくとして、そのなかの以下の見解にはつくづく同意させられる。

「 ネット上では、「縁故ならばなぜホームページ上で公開するのか分からない」とか「岩波書店は、何か意図があってホームページ上で、議論を呼ぶこと必至であるこの応募条件を公開したのだろう」といった趣旨の発言が散見されるが、私は、これは極めてシンプルな理由に過ぎないと思う。すなわち、会社上層部も採用担当者も、このような応募条件が、 社会的に大きな注目を浴びるという可能性を全く想定していなかった、 のではないか。私は、岩波書店は、自分たちがやろうとしていることが社会規範・社会常識から著しくズレているとは夢にも思わず、自分たちの行為が社会でどのように受け取られるか、という点への認識を全く欠いたままで、昔からやってきたという、このような条件を大っぴらにしてしまったのではないかと思う。私がこの首都圏労働組合特設ブログで繰り返し書いてきた光景である。 」

未読の方は、ぜひ上記記事全文のご一読を!
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2012.02.07 Tue l 社会・政治一般 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

「横板に雨垂れ」について
「横板に雨垂れ」の記事を読んで「正確に書く」モットーが徹底していることに感銘をおぼえた。とにかく忘れっぽい読者、いい加減な文章を書き散らす批評家が多い当世のジャーナリズムの状況では、この点はことに大切だと思う。とくに出典までさかのぼって引用箇所をていねいに明示しているのは、じつにありがたい。また説明や解説は的確であり、目配りがきいている。今後もこのやり方をぜひとも続けてほしい。(もっとも、当たり前であるが。話題についての筆者の意見や主張には賛成できないこともしばしばある。)
2012.04.03 Tue l 阿羅漢老人船木裕. URL l 編集
船木裕様
お返事が遅くなってしまいましたが、先日は過分な評価と励ましのコメントをいただき、恐縮しました。ありがとうございます。
ゴーゴリの翻訳「ペテルブルグ物語」を少し前に購入しておりまして、今読ませていただいています。図書館の検索で知ったのですが、ロシア文学と英文学の両方の翻訳をなされているのですね。じつはそういう方を私は初めて知りました。英文学の方も本の表題を見ると大変面白そうです。たとえば、悪魔学。埴谷雄高が「二つの同時代史」という岩波書店から出ている本のなかで「悪魔学」のことを熱心に話していて、面白そうだとちょっと興味をそそられたのですが、それきりになっていました。傾向からいって理解できるかどうか怪しいですが、そのうち手にとってみたいと思っています。
2012.04.10 Tue l yokoita. URL l 編集

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